シスプリワンピース

 

第11章 ロビンとジュアリの因縁対決

 


 

ナミ達と妹達は、兄を助けるために並木道の分岐点から手分けして捜索している。

 

      並木道のハイウェイ・・・

      車1台も通らないシーサイド道路で、ロビンと可憐と春歌の3人が残り少ない時間で、懸命に走りながら捜索している。

 

  ロビン「ベティーズと呼ばれる繁華街は、この通りから真っ直ぐなの?」

      この離島に初めて訪れるロビンは、春歌に尋ねてみた。

   春歌「はい・・・この先から突き当たりに街がうかがえます!」

      息を切らしながら、場所を教えた。この時の春歌は、すでにはちまきと桃色の稽古着に着替えていた。背中には、愛用の武器、長刀と弓が鞘に収められている。

   可憐「お兄ちゃん・・・」

      無事なのだろうか・・・と不安を抱きながら、必死に走っていく可憐は兄に会いたい気持ちで頭が一杯になっていた。

 

      しかし、3人が向かっていく前方にダークプロジェクトの司令官、ジュアリが待ち伏せしていた。

ジュアリ「ようやく見つけたよ・・・ミス・オールサンデー!!」

 ロビン「あなたは!!」

      ロビンは瞠目して、下唇を噛んだ。

ジュアリ「忘れたとは、言わせないよ!・・・貴様との因縁が残っているからね!」

 ロビン「やはり、ジャドーと手を組んでいたのね!」

ジュアリ「フン・・・ボスの素性を知られたからには、3人ともここで死んでもらう!!」

ロビンに対するジュアリの嫌悪感は、殺意へと生化学反応を生じて変化するかのように表情が変貌する。

 ロビン「お嬢ちゃん達は、すぐに逃げて!!」

   春歌「いいえ!・・・ワタクシも一緒に戦わせてください!」

      春歌は、必死になってロビンにお願いする・・・

  ロビン「・・・度胸あるわね」

      あまりにも危険な場面に、英気を満たしていた瞳で戦おうとする彼女の姿を見て、ロビンは戸惑った。

   春歌「はい・・・自信は無いですけど・・・少しでもお役に立てるよう全力を注ぎます」

 ロビン「わかったわ!・・・でも、気を付けて・・・この戦いは命の保証が出来ないから!」

  春歌「こう見えてもワタクシ、武術の心得があります!」

      春歌は自分の背負っている長刀を鞘から抜いた。みんなを守りたい気持ちと、兄を助けるために戦いたい気持ちで、覚悟を決めた。それが、大和撫子としての武士道精神だと、彼女は思っているのだろう。

 ロビン「長刀を習っているのね」

 

   春歌「ここは、ワタクシ達が阻止します!・・・ですから可憐ちゃんは先に兄君さまとお会いになられてください!!」

   可憐「春歌ちゃんは、大丈夫なの・・・」

   春歌「だって・・・可憐ちゃんの方が、兄君さまと一番会いたかっておられるみたいですから・・・」

可憐「え・・・」

春歌「だから・・・先に行って・・・」

   可憐「ありがとう・・・春歌ちゃん・・・」

      譲り合う春歌の気持ちに、可憐は瞳に涙を滲ませながら喜び、心から感謝した。

   春歌「何よりも信じる気持ちを持つことです・・・可憐ちゃん」

      微笑む春歌はウインクして、可憐に言った。

ジュアリ「そうは、いかないよ!!・・・1人残さず始末しなければならないんだ・・・生かせるものか!」

      変貌したジュアリは、エダエダの能力を使って、先に走って行く可憐に攻撃を仕掛けた。地面から這い上がってきた数本の枝が可憐を捕らえようとする!

   可憐「きゃあ!」

  ロビン「させないわ!!・・・“二十輪咲き〈ベインテフルール〉”!!」

      ロビンは両手を前で、交差させて構えた。地面から20本の腕が網状に繋がり、可憐を襲うとするジュアリの枝を阻止した。

  ロビン「早く逃げて!!」

   可憐「はい・・・」

      ロビンの能力で、辛うじて助かった可憐は、すぐに繁華街方面へ突っ走って行った。

   可憐「みんな、ありがとう・・・」

      走りながら、両手でお祈りした。何としてもお兄ちゃんを救わないと・・・彼女は心に誓った。

 

ロビン&春歌VSジュアリ・・・

 

ジュアリ「チィ・・・1匹逃がしてしまったか!・・・取り敢えずあいつは後だ・・・まずは、貴様から抹殺してやるよ!・・・ニコ・ロビン!!」

      憎悪を増していくジュアリは、ロビンに颯爽と攻撃を仕掛けた。彼女の腕が伸びる枝に変わり、飛んでくる刃物のようにロビンに猛襲する。

  ロビン「クッ!!」

      身をかわしたロビンだが、枝の刃が右の頬にかすってしまった。

  ロビン「私は無益な戦いは望まないが、仕方がない・・・」

      頬からかすり傷を負ったロビンは、目つきを鋭くさせ両腕を交差させた。

 ロビン「“ディエドスフルール〈十二輪咲き〉”!!!」

      ロビンの12本の腕がうまく相手の部位を捕らえた・・・

ジュアリ「フン、甘い!」

  ロビン「そんな!」

      ジュアリの体が螺旋状の枝束に変わり、猛烈に伸びる無数の枝はロビンの能力をも打ち負かせた。そして、即座に彼女を縛った。

ジュアリ「アタイの『エダエダの実』の能力で、体の各部が無類の枝に変化し自在に操れる・・・勿論、相手の技も見計らって応変に反撃もできる!・・・貴様のしょげた能力とは格違いなのだよ!!」

  ロビン「植物人間に・・・私の技が押されるなんて!」

      敵の枝にはめられたロビンが動揺を隠しきれなかった。狙った得物は決して逃さない彼女の堪能な能力が、相手の力に押し負けたと言うことに信じられなかったのだ。

ジュアリ「これだけじゃないよ!アタイの能力は途中で種類変化も可能なのだ・・・このようにね!!」

      ロビンを縛り付けている彼女の枝が、なんとバラの枝に切り替わった。

      ブスッ!! ブスッ!! ブスッ!!

  ロビン「あああああっ・・・・」

      無数の棘に刺されているロビンは周囲から血が染まってきた。

      キキキッ・・・グキッ!!

 ロビン「ああっ・・・!!」

ジュアリ「フフ・・・更にもがけばもがく程、縛られていくようにも巻かれてある!・・・肉体がバラバラになるのも直だ!」

      ジュアリの枝で絡み締められているロビン・・・顔を青ざめながら苦しそうにもがいている・・・出血もひどい。

   春歌「ロビン様!!・・・危のうございます!!」

      突然、春歌が相手の隙を計らって、瞬時に長刀『掬の打』でジュアリの枝を切り裂いた。

  ロビン「・・・ありがとう!」

      息を切らしたロビンは助かったようだが・・・出血とあばら骨が何本かいったようだ。

ジュアリ「フフ・・・7900万ベリーの賞金首がこれじゃあね・・・余程にグランドラインをなめてきたといえる!」

   春歌「え!? ロビンさんが7900万ベリーの賞金首!」

      ロビンが賞金首だってことを初めて聞いて春歌は驚いた。兄を捜しに協力してくれていた一番頼れる相談仲間が、賞金首になっていることにとても信じられなかったのだ。懸賞金7900万ベリーは海軍にとっても重犯罪者の海賊、そんな彼女と一緒に戦っている春歌の心境は複雑になっていた。

 ロビン「ごめんね・・・ショックだった、お嬢ちゃん・・・私は幼い頃から、海軍に罪人として標的され、海賊に守られて裏生活で生きてきたの・・・」

ジュアリ「もっぱら貴様は、そのような生き方でしかできないだろうよ!・・・なぜならおまえは昔から考古学者になったその意味合いで、海軍からの犯罪者のしもべとなっている!・・・世界でも禁じられた遺跡『プルトン』を解読できる唯一の危険人材だからな!」

   春歌「いいえ!・・・ロビン様がそんなことをなさるお方ではありませんわ・・・きっと、別に何か目的があって、考古学者になっておられると思います!!」

      春歌はつぶらな瞳で言い返した。

ジュアリ「フン!・・・この世界の恐ろしさを知らない善良な小娘には信じられないと思うだろうな・・・残念だが、それが事実なのだよ!・・・だから、アタイがロビンをこの世から消す!!」

      冷たい口調で忠告するジュアリ・・・このグランドラインで長い間、お互いに敵対しての因縁を深めていたらしい。考古学者と知り、賞金首となった時点で彼女自身が憎みや妬みが大きくなり、抹殺することだけを考えていた。

   春歌「ロビン様・・・ワタクシは信じます! あなたが決して悪い人ではないことを・・・ですから夢を諦めないで頑張りましょう!」

      その時、春歌が力強く励ました。

  ロビン「ありがとう、お嬢ちゃん・・・今まで真情をこめて私の気持ちを受け入れてくれたのは、あなただけよ」

      春歌の澄んだ瞳にロビンは喜びの表情を浮かべた。

ジュアリ「罪人の切ない気持ちを受け入れている奴もバカバカしいね・・・まあいい・・・冥土の土産として、いいものをお見せしよう!」

      ド〜ン!!

      2人の前に重くどっしりとした音で、何かが落ちてきた。

 ロビン「バンチ!」

  春歌「なっ・・・」

      何処かで見たことのある大型の亀・・・それは、ロビンがバロックワークスにいた頃、オフィサーエージェント達の送迎用として飼っていた水陸両用の亀だった。ルフィ達の仲間になって以来、一時期行方不明となったその亀は、今は身動きがとれない程に捕縛され、傷がひどく甲羅もひび割れていた。恐らくジュアリの残虐な仕打ちの仕業だろう。

ジュアリ「フン、知り合いかい!・・・この亀が今から裁かれる時間だよ!・・・一緒に地獄へと巡らすためにね」

 ロビン「やめて!!」

  春歌「させるものですか!!」

      春歌は、すかさず弓を構えて、ジュアリめがけて矢を打起こした。

ジュアリ「無駄だね!」

  春歌「きゃあ!!」

      地面から突然現れたジュアリの枝が春歌の体を巻き付けた。

ジュアリ「おまえごときに、アタイの体に傷1つ付けきれないね!!」

  春歌「く、苦しい・・・」

      ジュアリの枝に巻かれて苦しい様子だった。

ジュアリ「さて・・・背中から思いっきり行くとするかな・・・」

      冷笑するジュアリは、左手が枝に変化し、それが槍のように鋭い刃となった。

      グサッ!!!

  バンチ「うううううううッ!!!」

      甲羅から縦割りにされたバンチは周りが飛び散るくらいの血飛沫をあげた。

  ロビン「バンチ!!!」

   春歌「何て非道な!!!」

      予期もしない残酷なやり方に春歌は怒りをあらわにした。

 ロビン「ごめんよ・・・バンチ・・・あなた1人を置いてしまって・・・とても寂しかったよね・・・」

      よれよれとした姿で、バンチに涙をこぼした。1人ぼっちにさせて酷い事をしたな・・・と。

しかし、体を貫かれてしまったその亀は、血液があふれていくままでもうどこも動かない・・・

そんな悲しみ場面もお構いなしに、ジュアリが串刺し団子のようにバンチを持ち上げて、そのまま海へ投げ飛ばした。

 ロビン「バンチ!!・・・」

      海に駆け付けて号泣したロビンの涙は、バンチが投げ飛ばされた海面にポトポトと垂らした・・・

ジュアリ「もう戯れ言は終わり・・・次は貴様らが殺される番だよ!!」

      そしてジュアリは、縛られている彼女達を更に巻き付けた。

 ロビン「許さない!!」

  春歌「ええ!・・・ワタクシも!!」

      その時、ロビンと春歌は、陋劣なジュアリに対して怒りと軽蔑を買った。

ジュアリ「憤怒か・・・そこまで燃やしても所詮アタイには勝てない!・・・枝に縛られてどう立ち向かえるというのだ!!」

ロビン「・・・」

      ロビンは瞑想した。何か倒す方法があるのだろうか・・・

ジュアリ「まずは貴様からだな! ニコ・ロビン!!」

      ビシッ!! バシッ!!

 ロビン「あああッ!!」

      彼女が瞑想中でも容赦なく棘のついた枝でめった叩きにした。

   春歌「ロビン様!!!(せめて片腕だけでも、自由に動ければ・・・)」

      やられているロビンを見て、枝にもがいている春歌は嘆いた。たとえ片腕でも武器を持てば、縛られた枝を切り離すことができるからだ・・・しかし、強敵ジュアリの前には、そのような脱出方法は通用しないだろう。

ジュアリ「フフフ・・・『即死』ってことを考えてはダメだからな!・・・貴様はもがき苦しませながら、じっくりと嬲り殺してやる!!」

      怒りに震えているジュアリによって全身に傷を負ったロビンは、もはや限界に近い。

 ロビン「あなただけは許さない!・・・この非道極まりないあなたの性格を絶対に生かしてはおけない!!」

ジュアリ「フン・・・解剖前のカエルに等しい分際で笑わせるんじゃないよ・・・あの世で喚いてな!!」

      獣に憑かれたような目つきでせせら笑いしながら、ジュアリの腕から大きな葉の刃に切り替わった。そして、ロビンを切り刻もうとするその時・・・

      グキッ!・・・グキッ!

ジュアリ「なっ!?・・・か、体が!」

      ジュアリの体に何か異変が起きた!

ジュアリ「ぐあああッ!!」

      薬物の副作用を起こしたかのように、苦悶のうめきを吐き散らした。

  ロビン「私の能力を返した時点で、既に2本の腕をあなたの体内に埋め込んでおき、瞑想して幾何級数的に増殖させた!・・・全てのツボを殺すためにね!!」

      ジュアリが苦しみ始めた時点で、ロビンから枝がほどかれた。

ジュアリ「くッ!!・・・アタイに仕掛けた12本の腕をかい!!?」

ロビン「植物の成長源は根の中・・・その源を抑制する役割としてあなたのツボを利用させてもらったの!!」

      息を切らしたロビンが自分の本来の冷静さを徐々に取り戻した。

   春歌「ツボは人間にとっての急所の1つですからね」

ジュアリ「畜生!!!」

 ロビン「確かにあなたの能力は隙がなく強い・・・しかし、いくら強者でも人間の基本的な体の造りはみんな同じ!」

ジュアリ「そこまで計算していたなんて!・・・まさに恐るべき頭脳派・・・ニコ・ロビン!!」

      ロビンの作戦に、苦痛しているジュアリは悔やんでいた。

ロビン「戦いとは、二巡三巡先を読むこと・・・幸先悪いあなたの性格は、能力の攻め方を熟知した時点で、すでにお見通しだったのよ!」

ジュアリ「お・の・れ〜!!・・・ぐあッ!!」

      ジュアリの痛みは次第に増していく。

 ロビン「しかし、あなたは許さない・・・殺されたバンチの仇、討たせてもらうわ!!」

      傷だらけになりながらも、容赦なく必殺技でとどめをさす。

  ロビン「“百花繚乱〈シェーンフルール〉『大飛燕草』〈デルフィニウム〉”!!」

      地面から這い上がった100輪の腕が、ジュアリを締め上げた。

ロビン「・・・“ツイスト”!!!」

      グキッ!!! ゴキッ!!!

      すかさず関節技を仕掛けて、全ての骨をへし折った。

ジュアリ「ぐあああああああッ!!!」

      そして、悲鳴を上げているジュアリをそのまま海へ投げ捨てた。

 

      勝者・・・ロビン!!

 

 ロビン「ジュアリ・・・とても恐ろしい相手だった・・・」

      その後、息切れする彼女はゆっくりと倒れていく。

   春歌「ロビン様・・・大変!・・・お怪我がひどいですわね!」

      それを春歌が体で抱き止めた。

   春歌「そうですわ・・・良いお薬があります」

      春歌は小さなバッグから、白い和紙に包んだ塗り薬を出した。

 ロビン「・・・傷くすりの事かしら」

   春歌「はい・・・柳の皮をアルコールですり潰した薬草です・・・ワタクシが調合しました・・・効果も抜群ですわよ」

春歌はゆっくりとロビンの傷口に塗った。

 ロビン「へえ・・・すごいじゃない!」

  春歌「うふふ・・・作り方は昔、お婆さまから教わったんです」

 ロビン「ありがとう・・・お嬢ちゃん。」

  春歌「いいえ、お礼が言いたいのはワタクシの方です・・・いつも危ない所、助けて頂いて・・・本当にありがとうございます」

 ロビン「さあ・・・お嬢様の所へ急ぎましょう・・・」

  春歌「はい・・・ロビン様!」

      2人は、先に行った可憐の所の繁華街へ向かった。

 

*  *  *  *  *

 

      疎林の山中では、ウソップ、衛、鈴凛、四葉が必死で歩いていた。傾斜のある砂利道で息を切らしながら兄を捜している。上層からは、岩石が幾つもあり、落石の危険さえある険しい道のりだ。また、路肩は断崖で、その手前には『落下注意』の立て札がある。

鈴凛「ねえ、私達って道間違えているような気がするんだけど・・・」

      余りにもの不安げに辺りを見回した鈴凛が、場所違いに気付く。

ウソップ「(ここまで来たら、敵に会わなくて済むだろう・・・おれ達が避難している間に、みんなが、倒してくれればいい・・・)」

      敵と鉢合わせしたくないために、より安全地帯を求めようとしている。

   四葉「何言っているのデスか?」

      コソコソと独り言を言っているウソップに気付いた四葉が尋ねてきた。

ウソップ「そ・・・それはね・・・君達をより安全な場所に避難させようと思っているんだ!・・・そして、万が一敵が現れたら、おれが前に立って戦うんだ!!」

      心にもないウソをシビアに答えた・・・

    衛「ほんとに?・・・ウソップさん、頼もしい!」

   四葉「う〜む、四葉も惚れ直しました・・・」

ウソップ「そうだろ、そうだろ!・・・このおれ様がいれば・・・どんな危険も乗り越えさせてみせるぜ(ど〜ん)」

      2人に煽てられて、ウソップは調子よく胸を張りまくった。

   鈴凛「そんなことよりも、早くアニキに会いたいんだけど・・・」

      そのムードを壊すかのように、鈴凛が突然ツッコミを入れた。

ウソップ「わ・・・わ、わかっているよ!・・・だから、安全コースを選んだんだ!」

   鈴凛「進む場所からにして、安全とは思えないんだけど・・・」

      確かに、周りを見るだけでも危険な山道である。

 

      しかし、4人には更なる危険が待っていた。

 

      ド〜〜〜〜ン!!!

 

     「こんな所にも、いやがったか!!」

      天から降ってきたかのように棍棒を担いだスキンヘッドの大男が、突然彼らの前に現れた。

ウソップ「で、でた〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」

      ウソップは驚愕した。

    衛「山坊主だ、どうしよう・・・」

      青ざめなた顔で、腰が引けていた。

   大男「組織からの指令が出てな、おめェ達の生かしておくわけにはいかねェんだよ!!」

    衛「きっと、この人もダークプロジェクトの一員だよ〜!」

      そうだ!・・・実はこの大男もダークプロジェクト平社員の1人である・・・衛はますます恐怖した。

   大男「やはり、おれらの組織を知っているみてェだな・・・すぐに息の根を止めねェとな!!」

      ケタケタと声を上げて冷笑する大男が、指を鳴らした。

   鈴凛「ウソップさん、助けて・・・(恐)」

   四葉「恐いデス、何とかして欲しいデス・・・(恐)」

      恐々と2人はウソップの背後に隠れた。

ウソップ「ちょ、ちょ、ちょっと、待てよ〜!・・・あんな腕っ節の大男をおれにどうしろと言うんだよ〜(ガクガク)」

      さっきのセリフは何だったのか・・・3人の妹によって、盾にされているウソップは、凶悪顔の大男が迫ってくるにつれて震え上がっていく。

   鈴凛「お願いしますう〜!・・・ウソップさん・・・キャプテンだから強いんでしょう!」

      恐怖する鈴凛が、ウソップの背中を捕まえながら、必死に身を抱えている。

ウソップ「そんなこと・・・言われてもよ〜!」

      勝てそうにもない敵の目前に、恐がりのウソップは泣き喚いた・・・これがもし、ゾロやサンジなら、今ごろあっさり倒していたところだろう・・・元々戦力のない彼は、今まで敵をごまかしたりして、このグランドラインを何とか凌いで来た。そのため、1対1〈サシ〉で真剣勝負することは決して得意ではない。しかも、脆弱な彼に対し大男・・・体格からにしてハンディがありすぎる・・・

   大男「叩き潰してやるぜ!!!」

   鈴凛「ウソップさ〜〜ん!!!」

      ニヤニヤしながら大男が棍棒を振りかぶると、顔を押さえながら絶叫する。

      その時・・・

ウソップ「おまえら、耳をしっかり押さえていろ!!・・・ウソ〜〜ップ・・・“ノイ〜ズ”!!」

      キュキュキャキュ〜〜!!!

      ウソップは、バッグから黒板を出して、それを爪で引っ掻いた。

   大男「う゛はあああああ!!」

      爪の引っ掻く嫌な音で、大男に鳥肌が立ち精神が苦痛した。

ウソップ「行くぞ、おまえら・・・」

 妹3人「うん・・・」

      ここは、ひとまず逃げるしかない・・・妹達を強引に連れながら必死で走った。

 

 

      一方、ナミ、白雪、花穂、千影は・・・

      ようやく路地を抜けて、三叉路に出た。

   ナミ「また、分かれ道なの・・・」

      往路に戸惑うナミが息を付いた。

ナミ「これじゃあ・・・まるでゾロみたいじゃないのよ!」

   花穂「ねえ、千影ちゃん・・・どのコースが当たっていると思う?」

   千影「わからない・・・・・」

   ナミ「手分けした方が良さそうね!」

   千影「ああ・・・・・」

      しょうがなくつぶやくナミに、千影はコクリと頷く。

   花穂「ここから、また分かれるの?」

   ナミ「今はそれしか方法はないわ・・・手当たり次第に探さないとあんた達の兄ちゃん、どこで捕まっているかわからないからね」

      淋しそうな顔で尋ねる花穂に、ナミは言い切って判断した。

      そして・・・ナミと白雪は左側のコースに、千影と花穂は右側のコースにとそれぞれ分かれて行った。

 

 

ウソップ「ど、どうやら追ってこねェようだ・・・」

      岩窟に隠れるウソップは、何とか大男をまいた。

   鈴凛「ねえ・・・私達どうなるの?」

ウソップ「ここから出て、また先に進むんだ」

    衛「先って言っても、もう行き止まりだよ・・・」

      衛の視線に合わせて確かめると、先には、密集した畑と高い絶壁で塞がれていた。

ウソップ「な、なに〜〜〜!!」

      行き止まりにようやく気付いたウソップは絶叫する。

    衛「もしここで敵に見つかったら終わりだよ〜!」

ウソップ「おれ達には、もう逃げ場はねェのかよ〜〜(涙)」

      敵に追い詰められそうな事態に、衛は嘆き、ウソップはうなだれた。

   鈴凛「ああッ!大変!・・・四葉ちゃんがいないよお!!」

      その時、3人に焦燥感が迫っていた。

ウソップ「しまった〜!・・・あいつ、はぐれちまったのか!?」

    衛「どうしよう〜、捜さないとだめだよ〜!」

   鈴凛「ウソップさんお願いだよお〜・・・何とかしてよ〜・・・」

      必死で逃げていたためか・・・四葉の存在に2人の妹は気付けなかった。悲しそうな顔をして必死でお願いする鈴凛は、もうウソップだけに頼るしかなかった。

ウソップ「よ、よ〜し・・・おれ様に任せろ!窮地になればなる程、おれは強くなれるんだ・・・(ガクガク)」

      鈴凛の頼みに心よく受け入れたウソップだが、やはり恐怖の余りに戸惑いを隠している・・・捜索しに行っても、どの場所ではぐれたのか見当もつかないし、助けに後戻りしても危険を顧みるだけだ・・・と妙案が浮かばないままただ思考していた・・・だが、事態が最悪なのは変わりない・・・考えている間に敵も近づいてくる。

      そして・・・

   大男「あんなちょこざいなもので、おれから逃げようたって、そうはいかねェぞ!!」

      遂に・・・岩窟の上からウソップ達の前に舞い降りた。

ウソップ「わわわわ・・・!!」

      ウソップは、驚愕した。

   大男「誰から始末されたいか!!」

      こわ〜い目つきで、顔を歪ませた。

   鈴凛「助けて〜!」

    衛「もう逃げ場もないし・・・どうしよう〜(泣)」

 

      3人が追い詰められるその時だった・・・

 

     「諸君・・・待たせたネ!!」

      岩窟の上から、高々と声が聞こえた・・・シルクハットに怪しげな雰囲気を漂わすようなつりグラス、黒のローブを装った少女が現れた。その名は・・・

     「フフフ♪・・・この美少女怪盗『クローバ』が、今すぐあなたを成敗させてあげマスよ!!」

      含み笑いをして、大男に指さしながら告げた。

    衛「あっ、噂をすれば・・・あれはよつ・・・」

   鈴凛「わっ!・・・それを言っちゃあ、ダメ!!」

      鈴凛が慌てながら正体を言おうとする衛の口をすぐに押さえた。実は彼女こそが変装をした真の四葉である。自称『怪盗クローバ』と名乗り、常に謎解きクイズカードを常備しながら悪い奴をやっつけるためにたまたまやってくる?

ウソップ「おお〜、勇敢な女神よ・・・や〜い見たか、レプリカ野郎!・・・お前も悪運尽きたな!・・・もう謝ったって許してやんねェぞ!・・・あいつが来たからにはもうお前に勝機はな〜い!!(どど〜ん)」

      四葉だと知らずに助かったような顔でウソップは『おれの切り札』だと思いこみ、大男に前で堂々と威張りまくった・・・果たして、彼女が勇姿と大男に立ち向かって行くのだろうか?

クローバ「さらばだ・・・」

      と・・・すぐに去っていった。

ウソップ「ってか、逃げんな!!(ツッコミ)」

      何だろう、一体・・・

   大男「どうやら運が尽きたのは、そっちの方のようだな!」

      ニヤッとしながら棍棒を振った。

ウソップ「ぐわああ!!」

      かすった様子だが、わずかに当たっていた。ウソップは地面に倒れた。

    衛「ウソップさ〜〜ん!!」

      倒れて気を失っているウソップに衛は思わず喚声を上げた。

   大男「次はおめェらの番だ!!」

衛&鈴凛「いやあああ!!(泣)」

      容赦なく襲ってくる大男に、2人は抱き付き合いながら驚愕する。

ウソップ「必殺!! “火薬星”!!!」

 

      ドォ〜〜〜〜ン!!!

 

大男「ぐわっ!」

      後方で倒れていたはずのウソップが、パチンコで大男の顔面めがけて火薬玉を発射した。

ウソップ「ウソップ海賊団キャプテンの名にかけて、お前達を見捨てるわけにはいかねェ!」

   鈴凛「ウソップさん・・・」

衛「助かったあ、ありがとう・・・」

      2人はホッとした。

大男「ゴホッ!・・・ゴホッ!・・・おのれ〜!・・・きさまあああ!!」

      爆薬を浴び、煙を上げながら大男はブチ切れた。

ウソップ「わあああ!!・・・ごめんなさ〜〜い!!」

      ウソップは悲鳴を上げて逃げて行った。

   大男「待ちやがれ!!」

      大男がすぐに追いかける。

    衛「あの・・・」

   鈴凛「『キャプテンウソップ』って何なのでしょう・・・」

2人は唖然とした。

    衛「どうする?」

   鈴凛「と、とにかく追うわよ・・・(ゴクン!)」

      2人は大男に気付かれないように恐る恐ると走って行った。

衛&鈴凛「きゃっ!・・・何!?」

と、その途中に誰かが2人を捕まえた。

     「助かったみたいデスね!」

衛&鈴凛「四葉ちゃん!!」

      途中で見失った四葉が林の後ろに隠れていた。

   四葉「しっ〜〜!・・・敵に見つかってしまうデスよ!」

      敵に感づかないようにコソコソと2人を静かにさせた。

    衛「ごめん・・・」

四葉「無事だったデスか?」

衛「ボクは平気・・・それより、ウソップさんの方が絶命な危機に陥っている最中なんだよ〜!」

   鈴凛「大男に追いかけられて殺されそうなの・・・」

   四葉「成る程ね・・・それなら、四葉が良い方法思い出したデスよ!」

      その時、四葉は2本の指をあごに付けながら名案した。

   鈴凛「どうすれはいいの?」

   四葉「あの上層にある岩石を突き落とすのデスよ!・・・先回りして敵が近づいてくるタイミングを計って狙うのデス!」

      目を鋭くして指さすと、そこには崖からギリギリに置かれてある大きめの岩石が見えた。隣に植え付けられている樹木の細長い枝が引っかかっており、すぐにでも落石しそうな場所だった。

   鈴凛「私達3人で動かせるの?」

      どうやら女の子3人では、とても動かせるようなものではないらしい・・・

   四葉「その事なら四葉に良い方法があるのデスから、心配ないデス!」

      人気のない林の中で3人はコソコソと作戦を立てている。

 

      その頃・・・ウソップはたちまち悲惨な事態に陥っていた。

   大男「チッ!・・・逃げ足の速ェ奴だ!!」

      息を切らしながら続けざまに棍棒を地面に叩き付けながらしつこく追いかける!

ウソップ「ヒッ、ヒイイ〜〜!・・・助けてくれ〜〜!!」

      大男が振ってくる棍棒を次々と交わしながら泣き顔をして必死で逃げまくる!

      そして・・・

ウソップ「わああっ!」

      ドテッ!

      ついにウソップは地面に埋まっている石につまずいて転倒した。

   大男「ハァ! ハァ!・・・手こずらせやがって・・・死ねい!!」

      怒りを心頭にしながら、棍棒を大きく振りかぶった。

ウソップ「もうダメだ〜〜〜〜!!」

      ウソップは絶叫して頭を抱えた。

 

      その時・・・

   鈴凛「よし今よ!・・・いくよお〜!」

衛&鈴凛&四葉「せえ〜の!!」

      3人は、彼らの気付かない場所で、枝に結んでいるロープを引いた。

   大男「何〜!!」

      上層から、岩石が大男の頭上に落ちてきた。

 

      ゴゴ〜〜〜〜〜ン!!!

 

   大男「ぐわあああ!!」

      大男は、岩石の下敷きになった。

ウソップ「た・・・助かった・・・一体誰が?」

      滲み汗を出し、息を切らして一安心した様子できょろきょろと見回した。

  鈴凛「いやったあ〜!」

   四葉「キャッホ〜、うまくいったデスね!」

    衛「さっすが、四葉ちゃん!」

   四葉「フフ・・・伊達に探偵をした訳ではないデスよ!」

ウソップ「おおッ!・・・おまえ達がやったのか!」

      よく見ると岩石の後ろに3人が浮かれた様子で喜んでいた。

   四葉「そうデスよ!!」

   鈴凛「岩石に引っ掛かっている太く長い枝を梃子の原理でこのロープを引いて動かしたの」

   四葉「ちょうど特別に長い枝が生えていましたからね」

    衛「それで、岩石を突き落としたんだ!」

 

      しかし・・・3人が喜んでいるのも束の間だった。

   大男「よ・く・も、やりやがったなァ!!・・・クソガキャァ〜!!!」

      埋められている大男が岩石を持ち上げて激怒した。もろに当たっていたのは確かだが、まだ生きていた。スキンヘッドから顔面まで流血している大男の表情は、お化けのように一段と恐くなった。

衛&鈴凛&四葉「わあああああああっ!!!」

      大男を見て3人は絶叫する・・・両手を挙げて、顔は白目で涙を流し、鋭い歯が見える口はあごから飛び出す程に長く伸ばしたような感じでびびりまくっている。(ワンピースを御覧になっている方は、想像がつくと思います)

   大男「おれ様をここまで負わせやがって、この代償高くつくからな!!」

      大男に襲われて、3人は大パニックだ・・・

ウソップ「まて〜い!!」

      と・・・大男の後ろから、ウソップが大型の“5トンハンマー?”を振りかぶって来た。

   大男「なッ、何ッ!!」

      大男は絶句した。

ウソップ「ウソ〜〜〜ップ!!・・・“粉砕〈パウンド〉”!!!」

 

      カ〜〜〜〜〜ン!!!

 

      金属バットが当たったような音で、大男の頭を打ち当てた。大男は更に出血を伴った。

    衛「な・・・」

      3人は空いた口が塞がらなかった。

ウソップ「おれの名は・・・破壊の王・・・『キャプテ〜〜〜ン、ウソップ』!!!(どど〜ん)」

      大型のハンマーを片手で振り回しながら自慢する・・・

   鈴凛「ちょ、ちょっと・・・」

    衛「あの〜・・・5トンって、本物なの?」

ウソップ「わ・は・は・はッ!・・・あったりめェだ!!」

      高笑いしているウソップが仁王立ちをして威張った!

   四葉「本物な訳ないデスよ・・・普通の人間が5トンなんて持てる訳ないデス!」

ウソップ「わっわっ!・・・バカ!!・・・それを言うな!!」

      5tと表記されている大型のハンマー・・・実は、インチキで本当は軽い・・・フライパン2枚と黒革の張りぼてで誤魔化しているだけだった・・・そのため、折りたたみ式で収納も可能である。

   鈴凛「ダメだよ、四葉ちゃん!!・・・大男に気付かれちゃうよ!」

      はずみに言ってしまった四葉に2人は慌てた。

   大男「どーりで・・・痛くねェと思っていたぜ!!」

      しかし、本人にもう気付いていた・・・

ウソップ「ほら、見ろ!・・・相手が怒っているぞ〜(恐)」

   四葉「う・・・ごめんなさいデス(涙)」

   大男「全員ぶっ飛ばしてやるぜ!!」

      目つきがすでに怒りをたぎらせていた。

ウソップ「や、やるか!(びくびく)・・・おれ達に手を出したら・・・今すぐおれの・・・8千人の部下が黙っちゃ〜いねェぞ!!」

カッポ〜〜〜ン!

      全員がシ〜〜ンと静まった・・・

   大男「おもしれェ!・・・そいつら呼んでこいよ!!・・・早く!」

ウソップ「そ・・・それが急な用事で・・・こられなくてよ・・・(ガクガク)」

      怒り爆発寸前の大男にウソップはぶるぶる腰が引けていた。

   大男「ウソって見え見えなんだよ!!」

      血走った目を見開きながら、憤激して棍棒で殴った。

 

      バ〜〜〜〜〜ンッ!!

 

      棍棒で殴打されたウソップは、出血しながらぶっ飛んだ。

ウソップ「おまえら・・・おれが時間を稼いでやるから早く逃げろ!」

      流血しながらも、3人の妹に指示した。

ウソップ「兄ちゃんに会いたいんだろう!・・・早くしろ!」

    衛「でも、ウソップさんは・・・」

      ウソップの痛々しい姿を見て、3人は戸惑った。

ウソップ「おれは、おまえ達のキャプテンだ!!・・・可愛い部下を1人でも助けることがキャプテンとしての務めだ!」

  大男「おらァ!・・・何ワーワーと言ってるんだ!!」

      ボコッ!!!

ウソップ「ぐああッ!!!」

      大男は更に足蹴りもした。

   四葉「もういいデスよ、ウソップさん!・・・一緒に逃げましょうよ・・・とても敵う相手じゃないデスよ!」

      大男にボコボコにされているウソップを見て、痛々しい気持ちが耐えきれなかった。

ウソップ「おれは『勇敢な海の戦士』として、こいつに・・・勝つ・・・」

   大男「な〜に、寝言を言ってやがるんだ!・・・こんな弱っちい貴様が『勇敢な海の戦士』だなんて・・・笑わすぜ!」

      格好悪い姿勢で悶絶しているウソップを大男はあざ笑いした。

ウソップ「おれは弱くても・・・たとえうそつきでも『勇敢な海の戦士』になることだけは、本音なんだよ〜!」

      泣き喚きながらも天に向かってそう言った。自分の故郷でカヤと誓いの約束を交わした頃のことを思い出しながらも・・・

   大男「そんな夢は、あの世に行ってから追い求めろ!」

ウソップ「畜生!!!」

      冷笑しながら、大男が棍棒でとどめを刺そうとする・・・もはやここまでか、ウソップ!!

 

      と、その時・・・大男の前にウソップが消えた!

   大男「何!・・・どこへ行きやがった!?」

ウソップは、何と鈴凛達の前に居た。テレポーテーションしたかのように、瞬間移動で鈴凛と衛が連れてきたのだ。

   鈴凛「もう・・・見ていられないよぉ!」

ウソップ「あれ・・・おれは助かったのか・・・」

      ウソップは目をきょろきょろさせた。

    衛「うん・・・このゴーグルを掛けて2人でウソップさんを引っ張ったの」

      よく見ると、2人は妙なゴーグルを掛けていた。

   鈴凛「これは、モーショナルゴーグルと言って・・・コンピュータグラフィックスによってレンズに周りの動きを調節できる・・・いわゆるバーチャルリアリティを知覚させるものの1つだけど、ちょっと違うんだ・・・実際に相手も鈍くなって見える優れものなの」

衛「これをかけるだけで自分自身の行動が速くなるんだよ!」

ウソップ「それって、もしかして・・・おまえが発明したものなのか!?」

   鈴凛「この時のために準備してきたんだけど・・・」

ウソップ「そんな便利な道具があるなら、始めから使えってんだよ!!」

      ウソップは逆ギレした。

   鈴凛「ごめん・・・ごめん・・・私自身の発明がこんな戦いにも役に立ったとは正直思わなかったの・・・」

ウソップ「おまえはもっと自身をもてよ!」

      しかし・・・

   大男「おっとそこまでだ!!」

      ウソップ達が油断したのか・・・四葉が突然、大男に捕まれてしまった。

   四葉「う〜〜・・・助けてデス・・・(涙)」

衛&鈴凛「四葉ちゃん!!!」

ウソップ「しまった!!・・・おれ達が話しに夢中になっているスキに!!」

   大男「おい、動くんじゃねェぞ!!・・・この小娘をすり下ろしみてェにされたいか!!」

   四葉「いや〜・・・恐いよ〜!(泣)」

      凶悪な顔で、四葉を脅した。

   大男「まずは・・・その妙なゴーグルから、こっちによこせ!!」

      大男は命令した。

    衛「それはダメ・・・」

   大男「ならば、この小娘はどうなってもいいんだな!!」

   四葉「いやああ!!」

      四葉が悲鳴を上げる。

   鈴凛「わかりました、渡せばいいんですよね・・・」

      息を呑みながら、見られないように、静かに調節ねじを回した。

ウソップ「おい・・・そんなの渡して大丈夫かよ〜!」

   鈴凛「これね・・・はい・・・」

      そして自分のゴーグルを、大男のところに投げた。

   大男「それで、よし!・・・このゴーグルを掛ければ、おれもさらに強くなれるわけか!」

      ゴーグルを見て、ニヤニヤした。

   鈴凛「お約束通り・・・四葉ちゃんは返してよ!」

   大男「ば〜か!!・・・誰が返すと言ったんだ!・・・おまえ達を殺して・・・ボスも倒し・・・そしてこのおれ様が島を支配するんだ!!」

    衛「そんな・・・ずるいよ〜!!」

ウソップ「なんて、意地汚ねェんだ・・・」

      傲岸不遜な態度で、条件を呑まない大男に2人は憤りの悲しさで睨み付けた。

   大男「さて・・・おれ様がどれだけ速くなれるかな・・・って何だ、こりゃ!!」

      大男がゴーグルを掛けると、周りの世界がビデオのクイックモーションのように速くなって見えた。飛んで来るトンボや歩いて来る毛虫などが俊敏な動きで移動しているのも見えた。

   大男「か・・・体が言うこときかねェ!!」

      だが・・・実際から見ると、大男の動作が鈍くなっているだけだった。

   鈴凛「今だ!・・・四葉ちゃん、逃げて!!」

   四葉「は・・・はいデス!」

   大男「何ィ!!」

      その鈍くなっているのをスキに四葉が逃げてきた・・・大男の視点からだと、彼女がマッハの速さで去っていくように見えている。

   鈴凛「フフ・・・実は敵に渡す前に、調節ねじでスローモーションに切り替えたの!」

    衛「さすが、鈴凛ちゃんね!」

   大男「お〜、の〜、れ〜・・・き〜、さ〜、ま〜、ら〜・・・」

      何と、言語までも鈍くなっていた。

ウソップ「よ、よ〜し、よくやった、鈴凛!・・・今の内に攻撃するぞ!!」

衛&鈴凛&四葉「おお!!」

      ウソップはバッグから、セットハンマーを3人に渡した。

   大男「う〜、わ〜・・・な〜、ん〜、だ〜・・・!」

      大男は、ウソップ達の異常な速さに目を回した。

ウソップ「それ!・・・やっちまえええ!!」

 

      バキッ!!! ボカッ!!! スカッ!!!

 

4人はハンマーで大男をめった打ちにした。

   大男「ぐ〜〜〜わあああああ!!!」

      鈍いモーションで、血反吐を出す・・・

   大男「お〜、れ〜、は〜・・・ま〜、だ〜・・・く〜、た〜、ば〜、ちゃ〜、い〜、ねェ〜、ぞ〜・・・!!」

      しかし・・・流血しながらもスローモーションで立ち上がる・・・

衛&四葉「や〜い・・・鬼さん、こっちだ!!」

      はっちゃけながら2人は、大男を誘き寄せた。

   大男「こ〜、ろ〜、し〜、て〜、や〜、る〜!!!」

      茶化された大男は、すぐに2人を襲った。

衛「よし、いまだ!!」

   四葉「はいデス!」

      大男が接近するその隙に二手に分かれて逃げた。そして、彼が駆け付けた先は・・・何と断崖の手前だった・・・『落下注意』の立て札の前で、2人の陽動にはめられてしまった。

   大男「な〜、に〜・・・」

      大男は、そのままスローモーションで断崖へ向かおうとする。

ウソップ「よ〜し、ここでトドメだ!・・・必殺!! “火炎星”!!!」

 

      ボボ〜ンッ

 

   大男「う〜、わああああっ〜〜・・・」

      『ボンッ』と勢いよく炎に包まれて、はるか眼下に広がっている森へと落下して行った。

ウソップ「よ、よくやった、おまえら!!・・・今日から、おまえらも『勇敢な海の戦士』だ!!」

      負傷しながらも大男にとどめを刺したウソップは、自慢げに3人に言った。

   鈴凛「『勇敢な海の女戦士』ではなくて・・・」

ウソップ「そ・・・そうだな!・・・わ、悪かったな!!・・・戦士だろうが・・・女戦士だろうが・・・『勇敢な海の戦士』なのは同じなんだよ!!」

      そして、赤恥かきながらつっこんだ。

鈴凛「それにしても、怖かったよぉ・・・」

四葉「辛かったデス・・・」

衛「一安心だね・・・」

 

      ところが、一安心ではなかった・・・

四葉「むむっ!・・・何か焦げ臭いような気がしますけど・・・」

衛「あれを見て!!」

    衛が指さすと、断崖から煙が上がっていた。

鈴凛「大変!!・・・山火事だよぉ!!」

      その下を覗くと、森林がメラメラと煤を出しながら燃えているのが見えた。

ウソップ「しまったあ〜!!・・・火炎星で大男から燃え移ったんだ!」

   四葉「わわわ・・・あんなに燃えていたら、簡単には消されないデスよ!」

    衛「どうするの! ウソップさん・・・」

      3人は山火事に大パニックだった。

 

ウソップ「な、なに・・・心配いらねェぞ!・・・こんな時のために持ってきた新兵器があるんだ!」

      ウソップは愛用の鞄を開けて、中身をガサゴソと探った。

ウソップ「あった! これだ・・・ウォータダイヤル!」

   衛「ウォータダイヤル?」

      中身から取り出したのは、空島からもらってきた貝のようなダイヤルだった。

ウソップ「これを使えば・・・山火事は、一瞬で消せるはず・・・」

      早速、そのダイヤルを使った・・・

      すると、バシャー・・・と音を立てながら大量の水が噴き出し、燃え上がっている山火事を一瞬の内で消した。

ウソップ「ようやく、終わった・・・」

      戦いに疲れたウソップは地面に倒れた・・・

   鈴凛「大丈夫!・・・ウソップさん」

ウソップ「おまえら・・・『キャプテンウソップ』様はもう歩けねェ!・・・だから3人でみんなの所へ引っ張ってくれないか」

      バシッ!!

   衛「な〜に言っているの・・・ウソップさん!・・・ほら、行くよ!!」

      冗談が通用しない衛は、ウソップの背中を叩いた。

ウソップ「イタタっ!!・・・バカヤロ〜、傷口を叩くんじゃねっ!!」

   衛「いや〜・・・悪い悪い」

ウソップ「なんちゅう、力なんだよ・・・おめェはよ!!(ツッコミ)」

      衛に傷口を叩かれたウソップは、どうやら死ぬほどに痛かったらしい・・・

 

                                                              続く

 


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