シスプリワンピース
第4章 四苦八苦した航海
羊の船首像にまたがったルフィは、出航の指示をした。ゾロは重量物のいかりを水底から引き上げて、ウソップはマストの檣楼〈しょうろう〉まで登り、サンジとチョッパーは海賊旗の四角帆を広げた。それをじっと見つめていた妹達はしばし心を奪われていた。海賊って忙しいこともあるんだね・・・と。ルフィ「そんじゃあ、おめェら、出航するぞ!!」ナミ「その前に・・・『全員乗ったか』でしょう!!(怒)」怒鳴ってゲンコツをした。サンジ「怒鳴っているナミさんもステキだな〜♡」ナミ「みんな!! 忘れ物はないわね!!」妹10人「はい・・・」ナミ「では、北北東向きに前進するわよ!!」ナミは自分の腕に巻いている記録指針〈ログポーズ〉を確認して方角を指示した。ルフィ達と12人の妹達(ミカエル含む)を乗せたゴーイング・メリー号はそよ風に煽られながら次の目的地へゆっくりと進行していく。永久指針〈エターナルポーズ〉なしでの島探し、はたして残り4日、奪還に間に合うのだろうか・・・とその時、妹1人に突然の事態が起こった。白雪「みなさん、大変ですの!!!」白雪が船室から慌てて出て来た。咲耶「どうしたの、白雪ちゃん?」白雪「鞠絵ちゃんが・・・急に倒れたのですの!!」咲耶「え〜、どうして!!・・・さっき元気になったって本人言っていたのに・・・」みんな、大騒ぎだった。可憐「鞠絵ちゃん・・・また気分が悪くなったのかな・・・」心配そうに可憐は言う。ナミ「ちょっと、チョッパー!!・・・あんた何やっていたのよ、容態が全然回復していないじゃないのよ!!」チョッパー「そんなはずはない、おれちゃんと手当はしたよ」サンジ「おい、チョッパー!・・・医療ミスは『船医の恥』だぞ、わかってんだろうな!!・・・もし、鞠絵ちゃんに何か起こったらただでは済まないからな!!!」サンジは厳しくチョッパーに忠告した・・・チョッパーは、過去にドラム王国で不治の病に冒されていたヤブ医者、Dr.ヒルルクを治療するために誤って猛毒キノコスープを飲ませてしまったことがある。残り少ない余命を宣告したヒルルクは、虎視眈々と待っている敵の目前に来て、見窄らしく自殺してしまったのだ。自分の医術に関する知識と技量がないゆえに最も大切な人の命を奪ったチョッパーは、どんな病気も治せる『万能薬』を開発すると誓い、真面目に医学を学んでいる。そんな彼が医療ミスなんて今は有り得ないはずだ。雛子「サンジさんお願い・・・トナカイさんをせめないで・・・いっしょうけんめい鞠絵ちゃんの看病をしていたの・・・」サンジ「そ〜んなこと言われてもよ〜・・・雛子ちゃん♡」雛子が悲しそうな瞳でお願いされたサンジは、デレデレとした態度でも受け入れし難い様子だった。千影「早く容態を確かめたほうがいい・・・・・別の症状の可能性が高いかも・・・・・」千影は腕を組みながら真剣な表情で言った。そして、全員が鞠絵のいる厨房に駆け付けた。ミカエル「ワン!!」鞠絵「ハァ、ハァ・・・助けて・・・兄上様!」鞠絵が大量の汗を流しながら苦しそうに横たわっていた。それを見たチョッパーは急きょ容態を調べた。チョッパー「船酔いだ!!・・・多分酔い慣れしていないのが原因だろう!」サンジ「本当だろうな!!」チョッパー「間違いない・・・それが原因で高熱まで出している!!・・・急いでベッドの上で安静にさせるんだ!」そして、鞠絵は再び船室のベッドで眠っている。妹達はしんみりさしながら彼女の看病をしていた。その時、船の外では、積乱雲により突然の雷雨が伴っていた。波も強く船揺れも激しかった。花穂「きゃあ、大雨!?・・・さっきまで快晴だったのに〜!」亞里亞「ゴロゴロ・・・・・こわい・・・・・」亞里亞はびくびくしながら可憐に抱き付いた。ロビン「これが【グランドライン】の気候・・・この海域では、天変地異を巻き起こす異常気候が弱い者を容赦なく発病させていくの」咲耶「じゃあ、鞠絵ちゃんの高熱は、その気候も原因の1つだと考えられるってこと?」ロビン「ええ、だから少しの症状でもほんの油断が突然の死を招く厳しい海域・・・」咲耶「そんな!・・・鞠絵ちゃんが死んじゃうなんていやよ!!(泣)」悲しそうな瞳で咲耶は涙を流した。鞠絵「苦しい・・・兄上様・・・兄上様・・・」ミカエル「クゥ〜ン・・・」鞠絵の容態を看て全員が寂寥を帯びた。チョッパー「大丈夫だ!!・・・おれが必ず元気にさせる・・・『この世に治せない病気』はないんだ!」これが彼の船医としての信念だった。雛子「そうだ!!・・・みんなで『てるてる』さん作ろうよ。そしたら鞠絵ちゃんきっと元気になるよ」可憐「そうね、みんなで作れば鞠絵ちゃんも早く回復するわ」花穂「花穂も作る!!」亞里亞「亞里亞も・・・・・てるてるさん作る・・・・・」鈴凛「そんじゃあ・・・全員で製作にかかるよ!」妹8人「うん!」可憐「ロビンさんも御一緒にどうですか?」ロビン「ええ、喜んで協力するわ、早く元気になるといいね」ロビンはにっこり微笑みながら了解した。ロビンと妹達は鞠絵のために、一生懸命てるてるぼうずを作った。その時千影は、船室の奥で黙々とマムシの秘薬の製造に取り組んでいる。薬学の本で丹念に研究を繰り返す彼女が、博士ではなくオカルト使いであるとしても、知識を集中させ、適応する科学物質を分析して統計的に結果を導き出す頭脳は、犀利といってよいだろう。千影「鞠絵ちゃんの発病を治すための・・・・・秘薬・・・・・兄くんにも飲ませてみたかったな・・・・・」周りが静まりそうな不吉な予感・・・そんな感じもあった。一方、船のデッキでは、豪雨の中でナミが記録指針〈ログポーズ〉を絶えず確認しながら4人に航海の命令をだした。日が暮れた空は悪天のため、雲に遮られて薄暗くなり、遠雷が轟き、海にはいつともなく嵐の気配が迫っていた。ナミ「サンジ君・・・ここから面舵全開よ!!!」サンジ「イエッサ〜・・・ナミさん♪」雨の中でもサンジはナミに対してご機嫌だった。ゾロ「さっさと漕ぎやがれ・・・アホコック!!」サンジ「うるせェな、毒マリモ!!・・・てめェこそちゃんと漕いでいるのか!!」ナミ「喧嘩しない!!! 言われた通りに漕ぎなさいよ!!」サンジ「まかせて〜・・・ナミさん♡」ゾロ「ったく、人使いの荒い女だぜ!!・・・後で覚えてろ!!」ゾロは、愚痴をこぼしながらナミを睨んだ。そしてウソップは・・・ウソップ「ひ〜・・・雷雨の中なんていやだよ〜・・・」ずぶ濡れになりながら、甲板の隅で何をどうすればいいのかわからないまま、泣きごとを言っている。ナミ「ウソップ!!! あんた何やっているのよ!! 私が言ったこと全然理解していないじゃないのよ!!(怒)」ウソップ「だって・・・どうすれば良いかわからなくてよ〜・・・」ナミ「だったら何で聞きに来ないのよ(怒)!!!」ウソップ「聞きに行きたくても・・・今のおまえ怖くてさ〜・・・」ナミ「どっちみち怒られるんだったら聞いて怒られた方がいいんじゃないの!!(怒)」ウソップ「ごめん・・・悪かったよ・・・」ナミ「だ・か・ら謝って済むような問題じゃないでしょう!!・・・もし島の奪還に間に合わなくなって・・・妹達に何か起きたら本当にごめんで済むと思っているの!!!(怒)」ウソップ「いや・・・それは・・・(汗)」ナミ「じゃあ・・・責任持って極刑に処する!! それしかないんじゃないのかしら!!!(怒)」サンジ「こら長ッパナ!・・・ナミさんを怒らすんじゃねェぞ!!」ウソップ「ひ〜・・・助けてくれ〜・・・」ナミに相変わらず理不尽な事で怒鳴られているウソップは、精神的に追い詰められて苦しいご様子だった。その時、激しい船揺れによりデッキハウス屋上の畑からみかんが何個か転がっていた。ルフィ「食っちゃおう」雨の中、船縁の床に座ってみかん(しかも皮ごと)を食っている所、ナミに見られてしまい・・・バゴ〜〜〜〜〜〜ン!!!ナミ「あ・ん・た!!!・・・仕事もしないでさっきから何しているのよ!!!」お手元の武器『クリマ・タクト』でルフィの頭をぶん殴った。ゴン!!!サンジ「てめェは偉そうにナミさんのみかんを食ってんじゃねェ!!!」さらにサンジからも、かかと落としされた。ルフィ「いてェ〜な(痛)・・・落ちてもったいないから食っただけじゃないか・・・あ〜、うまかった」ナミ「私のた〜いせつなみかんを食べたから・・・どのように懲らしめようかしらね〜!!!」怒りの瞳はすわったままでナミは指の骨を鳴らしながら、じわりじわりとルフィに攻める。ルフィ「いやだ!(ベー)」ひとまず去った。ナミ「逃げるな!!!(ツッコミ)」ナミはルフィをある程度追いかけたが、逃げられてしまった・・・サンジ「あのクソゴム!!・・・ナミさんのみかんを・・・」ナミ「もういいわ、サンジ君!・・・あいつ後で死刑よ!!」ナミは怖い顔をして逃げたルフィに宣告をする。ウソップ「冷血魔女だ・・・」ウソップは恐怖した。翌朝、何とか悪天を克服したゴーイング・メリー号は、ゆうゆうと次の目的地へ進んでいる。デッキテラスには、鞠絵の元気回復のためにみんなが作ったてるてるぼうずが横1列に吊り下げられている。そのおかげなのか・・・空は再び快晴に戻った。咲耶「おはよう」可憐「ええ、おはよう・・・」デッキテラスで海を眺めている可憐はやや哀しげな表情だった。咲耶「清々しいね」体を伸ばして深呼吸している咲耶だが、まだ少し寝ぼけていた。可憐「どのくらい進行しているのかな」咲耶「だいぶ進んでいるみたいよ、ナミさんに聞いたらわかるかも」凛とした静寂の朝、昨夜まで激しかった船揺れが今は静かに進行し、爽快な心地よさである。そして、煙草を吹かすサンジが後甲板から2人の前にやって来た。サンジ「よう、早いね」可憐&咲耶「あ・・・おはようございます」サンジ「夜明けの朝に、美女2人ってのも乙なもんだな・・・」青空に輝く2人を見てにっこりするサンジが言った。咲耶「はい・・・」サンジ「おっと失礼、いらんこと言って・・・」可憐「そんな事ないです(照)」その時サンジは、再び銜え煙草に火を着けた。サンジ「それより、君達の兄ちゃんってどんな人なのか・・・」可憐「はい・・・かっこよくて・・・優しくて可憐達にとって世界でただ1人の大切なお兄ちゃんです」咲耶「お兄様はいつも私達の事を優しくしてくれているんです・・・」サンジ「そうか・・・妹思いなんだな・・・その兄ちゃん・・・」サンジが話した言葉に2人の双眸は、どことなく憂鬱な感じであった。サンジ「よし、待ってろ!・・・今、朝食の準備をするからな・・・」可憐「あ、お願いします」可憐にお願いされたサンジはゆっくりと厨房に向かった。と、いきなりルフィが現れた。ルフィ「サンジ、おれのも朝メシだ!!」その声が静寂を破るかのように、ルフィがサンジに朝食の注文をした。サンジ「てめェは、朝っぱらからうるせェんだよ!!・・・クソアホが!!・・・食材も底をついているんだ・・・食いたいなら自分で探せ!!」ルフィ「ケチだな〜・・・おまえ!」サンジ「よく言うぜ・・・昨日ナミさんのみかん食ったくせに!!」ルフィ「ああ腹へった〜・・・」腹の虫を鳴かしているルフィは喚いた。そこで、チョッパーとミカエルが来た。咲耶「あっ・・・トニーさん・・・鞠絵ちゃんの具合はどう?」チョッパー「うん、昨日よりはだいぶ落ち着いて来ている・・・でも、午後になるまでは寝かせておいた方がいい・・・」咲耶「良かった・・・」可憐「きっと『てるてるぼうず』さんのおかげよ」咲耶「そうね・・・」寂しげに咲耶は首を傾げた。鞠絵が完治していないことで少し不安げな様子だった。ミカエル「ワン!」ルフィ「おお、うまそうな物みっけ〜!」ミカエル「ワン?」ルフィ「ようし、こっち来い・・・」マストに座っているルフィは腕を大きく伸ばしながらミカエルを捕まえた。ミカエル「クゥン!?」ルフィ「おい、サンジ!!・・・いい食材見つけたぞ〜!!」サンジ「何がだ!(怒)」ルフィ「ほら、見ろ!!・・・犬料理だ!!」サンジ「その犬食えるのか?・・・ま、非常食にいいかもな。」ルフィ「おお!・・・犬食うぞ〜!!」ミカエル「キャイ〜ン!!」ルフィの言葉を聞いたミカエルは、慌てて逃げ出した。ルフィ「うおおおお!! 犬料理待てえええ!!!」よだれを垂らした格好で、なぜかフォークとナイフを持ちながら、執拗にミカエルを追いかけ回る。それを必死で逃げているミカエルは、チョッパーの所に隠れた。ミカエル「ワン!!・・・ワワン!!・・・ワン!!」チョッパー「『ぼくは食い物じゃない』と言っているよ」ルフィ「いい加減食われろ、おまえ!!」ミカエル「ワン!・・・ワン!・・・ワワワン!!」チョッパー「『ぼくだって生きているんだ、食われたくない』と言っている」ルフィ「往生際悪いぞ〜〜!!」ルフィが、ミカエルに飛び付こうとするその時・・・バコ〜〜〜ン!!!ナミ「あんた!!・・・人のペットを勝手に食おうとしているんじゃないわよ!!!」ナミは激しくゲンコツした。ルフィ「何するんだよ・・・ナミ!」ナミ「そう言えばあんた・・・昨日みかん黙って食べたわね・・・(激怒)」その後ルフィは、ボコボコにされた。ナミ「さあみんな!・・・そろそろ島が見えてくるわよ!!」サンジ「わかりました〜、ナミさん♪」厨房のドアからサンジが顔を出して了解した。衛「もしかして・・・あにぃに会えるの?」ナミ「違うわ・・・ログを記録するために取り敢えず近くの島へ停留するの」衛「な〜んだ・・・違うんだ」衛はがっかりした。咲耶「お兄様・・・本当にさらわれたのかしら・・・」先程のロビンの言葉で気が気でない咲耶は無性に不安感が湧き上がってきた。可憐「お兄ちゃん・・・くすん」それを聞いて、更に思い詰めた可憐が再び涙を流した。「フレ〜!・・・フレ〜!・・・お兄ちゃま!!」その時、何処からか不穏な声が聞こえた。花穂「フレ〜!・・・フレ〜!・・・お兄ちゃま!!」よく見ると、船首のデッキから1人でボンボンを振りかざしながら応援しているのだ。空と海との地平線を見つめて、兄の事を思い出しながら・・・可憐「あら、花穂ちゃん・・・こんな所でチアリーディングの練習?」花穂「違うの・・・」花穂は首を振った。花穂「花穂ね、さらわれたお兄ちゃまを元気つけるために応援しているの・・・」哀しげな口調で花穂が言った。ナミ「みんな、兄の事が心配なのね」花穂「だって〜・・・花穂、お兄ちゃまの事が大好きだから・・・」咲耶「私だって同じよ・・・」サンジ「相当兄の事が恋しいみたいだな・・・」サンジがデッキハウスの方からやって来た。可憐「サンジさん・・・」サンジ「だが・・・その前につらい試練があったりもするもんだ・・・特にこの海域には付きものだがな・・・もし本当に好きだという気持ちがあるなら、どんなつらいこともめげずに強い信念を持つことだ・・・信じて生き抜けばきっといいことがあるはずだからな」咲耶「・・・信念ね」可憐「ありがとう・・・サンジさん、可憐頑張ってみます・・・」サンジ「さて、朝食だ! 食糧切れのため今はサンドイッチと紅茶で勘弁してくれ・・・レディー達限定だけどな(笑)」朝食はすでにデッキテラスのテーブルにずらっと並べられていた。衛「あっ・・・意外と早いね」可憐「ありがとうございます・・・」サンジに対して笑顔を見せた可憐だが、朝食を見て少しばかり憂鬱な気持ちになった。ナミ「ウチの船長ったらあんた達のペットを食べようとしていたのよ」花穂「ええ〜・・・それじゃあミカエルが可愛そうよ〜」咲耶「鞠絵ちゃん・・・悲しむわ」ナミ「ほんとに非常識よね」女性達はデッキテラスで爛々と朝食を取った。サンジ「それよりチョッパー・・・もう少ししたら島に着くそうだ・・・ウソップとゾロは何をしている!」チョッパー「ウソップは船修理のための材料集めをしているが、ゾロはまだ船室で寝ているよ」サンジ「だろうな・・・こんな朝っぱらから、あの寝腐れ野郎がそう簡単に起きるわけねェか・・・」ゆっくりと進行して来たゴーイング・メリー号は、ナミの航海通りに目的地の島へたどり着いた。ここの島は、とくに目立った領地や基地もないごく普通の離島で、少数だが住民達が暮らしているのどかな田舎町もある。ナミ「取り敢えず人気のない沖合に船を泊めたから大丈夫しょう」ナミは辺りを警戒しながら停泊させた。自分達の海賊船が住民達に見つからないようにするためである。サンジ「まずは、食材からだな」チョッパー「早速薬が欲しい!」ルフィ「ジャドーはどこだ〜!!」ウソップ「って言うかここにはいねェぞ!!(ツッコミ)」ウソップはルフィにチョップをした。ロビン「あまり大声で言わないほうがいいわ、船長さん・・・下手に知られたらここの住民達にも命を狙われることになるから・・・」雛子「わ〜い!・・・ヒナ砂浜であそぼ〜〜!」亞里亞「亞里亞・・・・・甘いのが・・・・・食べたい・・・・・」春歌「ワタクシは勘が鈍らないように浜辺でお稽古を・・・」衛「ローラーブレードでマラソンし〜よっと!」千影「秘薬を製造するための材料が・・・・・まだ必要だ・・・・・」咲耶「着替え用のお洋服を買わなきゃ!」可憐「あの・・・鞠絵ちゃんの酔い止め薬を買いたいんですけど・・・」ナミ「お金貸すわよ!・・・利子3倍ね」ゾロ「子供相手に利子なんざ付けるな!!・・・ヤミ金女め!!」バキッ!!! ボカ〜ン!!!ナミ「いい・・・この人は貸した分の残り20万ベリーまだ返済していないの・・・よい子のみんなはこんな人間にはならないようにね・・・借りた物は必ず返すこと、わかった!!」妹7人「ハ〜〜〜イ!!!」妹達は元気に返事した。ルフィ「お〜い、大丈夫か・・・(つんつん)」ルフィは、ナミに殴られて倒れているゾロを小枝で突っついた・・・実は言うとゾロはローグタウンで刀を買うために、ナミからお金を借りたのだった。本人は結局使わなかったが、なにせあの金欲的なナミがそっくりの返済を許すわけがない。お金を使わなくても必ず利子を付けて返えしてもらうことが彼女のモットーでもあったからである。可憐「では、鞠絵ちゃんのお薬買ってくるから・・・白雪ちゃんは看病お願いね」白雪「任せてですの!」早速ルフィ達は、次の出航に備えての調達に出かけた。そしてウソップ、花穂、鞠絵、白雪、鈴凛、四葉が船番をしている。船室の中・・・白雪「鞠絵ちゃん・・・気分はどうですか?」鞠絵「ええ・・・大丈夫です・・・」毛布を下半身だけ被っている鞠絵が憂いを帯びながら返事した。白雪「でも船酔いだけで済んでよかったですの・・・それに今ね、可憐ちゃんが酔い止め薬を買いに行っている所ですからもう心配いらないですの」白雪はにっこり微笑んだ。白雪「あれ、お布団ですか?・・・ベッドはどうしたんですか?」鞠絵「あ、今ですね・・・鈴凛ちゃんが耐震用のベッドに改造している最中なんです・・・サンジさんがお願いしたんですよ」白雪「それはよかったですの」鞠絵「はい、助かります」久しぶりに鞠絵が屈託のない笑顔を見せた。また、同じ部屋では花穂が机に座ってオルゴールをじっと見つめていた。花穂「もう動かないのかな〜・・・」花穂にとって大好きなクリスマスソングが流れるオルゴール、それが壊れた時計のように静止している状態だった。動かないとわかりつつ無意識にふたを開け閉めしている彼女、是非動いて欲しいと願う気持ちが本人の心の中に定着しているのだろう。白雪「花穂ちゃん・・・机にこもってどうしたのですの?」鞠絵「ええ、動かなくなったオルゴールを見て元気なくしているみたいなんです」2人はやや哀しげな顔で花穂に視線を向けた。そしてウソップは昨日の戦いや悪天運行により、一部損壊した船の修繕に取りかかり、その助手にはミカエルが材料を口に銜えて持って来ている。ウソップ「ルフィの奴め・・・あんな狭い場所で派手に大技使いやがって!・・・全く、人の苦労も知らないで・・・」ミカエル「ク〜ン・・・」彼は愚痴をこぼしながら作業をしていた。沖合の浜辺では・・・春歌「えい!!!・・・やッ!!!・・・はあッ!!!(兄君さまをお守りしなければ・・・)」稽古着姿で声を出しながら、なぎなたの練習をしている。さらに浜辺の森林付近では、ルフィ、雛子、亞里亞の3人が遊んでいて、千影は彼らのすぐ近くで材料調達をしている。雛子「あっ・・・カニさんがたくさん歩いているよ」亞里亞「ほう〜・・・・・」2人は、樹の下に座りこんで珍しそうに赤いカニを注視していた。浜辺から大量の赤いカニが、ガサガサと物音を立てて絶え間なく進んでいる。目的地がはるか遠方なのか、カニは歩くことに忙しそうだ。ルフィ「おお・・・うまそうなカニだな〜!」ルフィはカニを1匹、拾って食べようとする・・・「そのカニは食べないほうがいい・・・・・」と、彼の背後に突然千影が現れた。ルフィ「な・・・なんだおまえ!・・・いきなりどこから来たんだよ!」千影「・・・・・体内に寄生虫が存在しているため・・・・・生食すると食中毒にかかる恐れがある・・・・・」ルフィ「なんだよ、食えねェのか・・・腹減っているのになあ・・・」ルフィはそのまま林の奥へカニを投げ捨てた。投げ捨てられたカニは仲間達が進行する別の場所へ逃げていった。千影「これはクリスマスアカガニだよ・・・・・」雛子「クリスマスアカガニ?」千影「クリスマスアカガニはオカガニ科の一種で・・・・・オーストラリア領などの南半球に大量に生息している・・・・・普段このカニは、幼生期までは水域で生活し・・・・・クリスマスの時期になると成体になりマングローブ域の湿った所に巣穴を掘って生活するのだが・・・・・この時期、この海域での活動は珍しいものだ・・・・・恐らくオーストラリア領から、グランドラインへ島流しされて来たのでしょう・・・・・ライフスタイルが不規則なグランドラインでは、このカニも繁殖期や成体期なんて無意味なものさ」千影はクールに力説した。雛子「ふ〜ん・・・カニさんもたいへんなんだね」亞里亞「たいへん・・・・・」千影の説明を聞いた雛子と亞里亞は再び赤いカニの方を見つめた。ルフィ「おまえ・・・何でも知っているな!・・・ロビンみてェだ」千影「それほどでも・・・・・」亞里亞「あ・・・・・」パラソルを差している亞里亞は樹木の上を見上げた。亞里亞「さくらんぼ・・・・・」そこには、緑の葉で覆われた木の枝から赤い色をした実がたくさん咲いているではないか。亞里亞は美味しそうにそれを見つめている。ルフィ「よし、おれが取ってやろう」ルフィはゴムゴムの力で腕を長く伸ばしてさくらんぼを取った。ルフィ「ほ〜ら、取ったぞ!」両手のひらにたくさんのさくらを見て、亞里亞と雛子の顔がほころびた。ルフィ「そんじゃあ、食うか!」雛子&亞里亞「わ〜い!」3人はうまそうにさくらんぼを食べた。亞里亞「ゲホッ!!」赤々と綺麗な色をした果実は亞里亞の口には受け入れなかったのか、彼女はすぐに吐きだした。亞里亞「これ、たべれない・・・・・」雛子「亞里亞ちゃん、おいしくなかったの?」ルフィ「そうか?・・・おれは結構うまいと思うけどな」雛子「ヒナもたべれるよ・・・少しすっぱいけど」亞里亞「いやだ・・・・・亞里亞すっぱいのキライ・・・・・甘いのがいい・・・・・」実は言うと亞里亞は酸っぱいのが苦手だった。ルフィ「じゃあ、おれが食うぞ!」ルフィはみんなの実を掻払って口にほおばった。雛子「ああ!・・・ずる〜い!!」ルフィ「早いもの勝ちだ・・・しっしっし!」ムキ歯を出しながら笑っているルフィに対し、雛子は頬をぷぅっと膨らませた。千影「楽しそうだね・・・・・」千影は2人の無邪気な姿を見て物静かに微笑んだ。亞里亞「兄や・・・・・」と・・・亞里亞は突然言った。雛子「えっ!・・・どこどこ!?」その声に反応した雛子は目をきょろきょろさせた。亞里亞「あそこ・・・・・」亞里亞は空に向かって何かを指さした。亞里亞「兄やの形をした雲・・・・・」どっしりと兄の輪郭を描いた形が大きく見えた。雛子「なんだ・・・」亞里亞の一言に雛子はがっかりしていた。本当に兄に会えることに目を光らせて期待していたのが空の雲になってでしか見えないことに彼女の喜びテンションが1つ下がった。まさかこんな場所で兄に会える訳がないか・・・ルフィ「あれが、おまえらの兄ちゃんなのか?・・・普通の雲にしかみえねェぞ」まわりの状況なんかお構いなしにルフィは言う。雛子「それは入道雲っていうんだよ」ルフィ「なんだ、そりゃ?」雛子「う〜んとね・・・かんたんに言ったらカミナリ雲の子どものようなものかな・・・」ルフィ「う〜ん???」ルフィは頭を悩ませた。それにしても雛子でも解る言葉に苦悩するなんて彼はどこまで頭が悪いのか・・・千影「夏の雲さ・・・・・入道雲とは・・・・・映像的には物の形に似る雲・・・・・坊主頭が化身した物だと言い伝えがあるためこう呼ばれているのさ・・・・・」雛子「あ、そうか!」雛子はビシッと両手をたたきながら理解した。ルフィ「ナミにでも聞いてみようかな?・・・そのニュウモン雲ってやらを・・・」亞里亞「入道雲って言うの・・・・・」ルフィ「そ・・・それだ!(恥)」さらには亞里亞にも言われて顔色なしだ。ルフィ「そんな事よりおまえら・・・今からいろんなとこまわって見ようぜ!」雛子「だいじょうぶなの?・・・みんな待たしてしまうんじゃない・・・」ルフィ「平気だって・・・あいつらもどっかその辺で遊んでいるに違いないさ」雛子「そうなの?」ルフィ「ああ!・・・だから冒険だ〜!!」本人は思いっきり両手を挙げながら、はつらつと言う。千影「おもしろい人だね・・・・・ルフィさん・・・・・」天真爛漫な彼の態度に少し気に入ったらしい・・・4人はこれから近くの村を回って行く・・・しばらく時間が経ち、買い出しを終えたナミ達が船〈ゴーイング・メリー号〉に戻って来た。これからの出航に備えての必需品は全て揃った訳だが、まだ食糧補給のほうが十分に満たしてなかった。サンジ「主食と飲み物関係は買い揃ったが、おかず分の食糧がまだ足りないな・・・この人数じゃ、揃えきれないのも無理ないか・・・」買い出し用リアカーを担いで来たサンジがつぶやいた。飲み物補給用の樽や20キロの米俵、数切れの牛肉など沢山の食糧が積んであるのだが、なにせ3日間×20人分なので、リアカー1台では足りない位だった。衛「いっぱいあるね〜」浜辺近くの道路からローラーブレードでやって来た衛が言った。サンジ「まあな・・・」ナミ「これだけ人が多いと本当にかかる費用も膨大ね」余りにも出費にナミはため息をついた。可憐「ごめんなさい・・・可憐たちがいるからこんなにお金がかかって・・・」ナミ「別にいいのよ、気にしないで・・・(ニコ)」そして彼女に聞こえない所でウソップが・・・ウソップ「絶対にウソだ、あの疑わしい顔は後で分け前を頂くつもりだ」チョッパー「そうなのか・・・」ウソップ「だいたい考えてみろよ・・・あの金にうるさいナミが多くの費用で平然していられるとでも思うか?」こっそりと言った。ナミ「そこ!! 今なにか言った!!」ウソップ「いや、別に・・・」ギロっとナミに睨まれているウソップはうまい具合にしらを切った。が・・・ナミ「あんた、私がお金にうるさいと言ったから今日1日、メシ抜き!!」ガ〜〜〜ン!!ナミに図星を突かれた。ウソップ「あいつ、地獄耳かよ〜・・・」ウソップは涙を流した。ナミ「それとチョッパーもウソップと一緒になっていたから・・・掃除罰当番ね!」チョッパー「そんな〜〜(がーん)」チョッパーも涙を流しながら、唖然とした。春歌「もしよろしければワタクシが掃除当番を致しましょうか」チョッパー「いいよ、別に・・・」春歌の気遣いにチョッパーは遠慮した。ナミ「それにしてもルフィ達はまだ戻ってこないの!!」サンジ「どうやらそのようですね」ナミ「全く、何しているのよ!!」ナミはイライラしながら船の外で立ち止まった。出航に急がねばならない状況なのに何処かでのんびりしている人がまだ5人もいる。サンジ「まあまあ、ボクが後できつく言っておきますから・・・」サンジはにっこりしながら、ナミに優しく言った。咲耶「まだ・・・千影ちゃんが戻って来ていないわね」咲耶は不安な気持ちで言った。可憐「そう言えば・・・雛子ちゃんと亞里亞ちゃんも戻って来ていないわ・・・もしかして襲われてないかな・・・」可憐も突如心配いていた。千影はともかく妹の中でも幼い2人が戻ってこないと誰だって心配するのは当然だろう。ナミ「大丈夫よ・・・あの子達にはルフィが付いているからそのようなことは全くないわ」確かに、このグランドラインで強敵とのいくさを何度も乗り切った猛者、あのルフィがいる限り不慮に襲われることはないだろう・・・絶対に。そして、ようやくルフィ、千影、雛子、亞里亞が戻って来る。ナミ「遅いわよ、あんた達!!・・・どこほっぽらかして歩いてきたのよ!!」遠くでナミの怒声が聞こえた。雛子「やっぱり怒っているよ〜・・・ここはうまくごまかさないと・・・」びくびくしている雛子はコソコソと3人に話した。ルフィ「いや〜、悪い・・・ちょっくら冒険の夢中で時間なんかわすれちまってさ〜・・・」雛子&亞里亞「ホントに言うな!!(ツッコミ)」とんでもなくバカ正直なのか、2人は屈託のないルフィにつっこんだ。ナミ「こんな大事な時に冒険して遊んでいる暇ないでしょう・・・バカじゃないの!!!」ルフィの答えにナミは大声で怒鳴った。そのピリオドを打つかのようにゾロも帰ってきた。ゾロ「おいおいおまえら・・・おれを出し抜いてもう出航の準備か!」ゾロは鋭い目つきをしながら言った。ウソップ「ってか・・・おめェが遅ェんだよ!」ゾロ「しょうがねェだろ!!・・・散歩中に森に迷ったんだ!!・・・そこで大量のクマが突然襲いかかってきたところ、派手にぶった斬ったらようやく出られたってわけだ!」ナミ「何なのよ!!・・・あんたは!!(怒)」サンジ「オロスぞ!!・・・こら!!(怒)」ゾロの訳がわからん行動に2人は逆ギレした。雛子「もしかして、それって迷子?」ゾロ「てんめェ!! それを言うな!!!」雛子の一言にゾロはガチンときた。実は言うと彼は極度の方向音痴だったのだ。ゾロ「それより食糧になるもの、持ってきたぞ!・・・ほら」彼は無愛想な表情をして食材を前方に投げ下ろした。しかし持って来たのはオオガエルや大型のネズミ、コブラであった・・・ナミ「ちょ、ちょっと!!・・・何なのよ、これ!!」ゾロ「みりゃわかるだろ!」確かに下手物ばかりである。ふつうの人なら食べないだろう・・・咲耶「も・・・もしかして・・・こんな物食べるの・・・」その下手物を見た咲耶が顔を青ざめた。ゾロ「そうだ!!」雛子「ヒナこんなの・・・いらない!」亞里亞「亞里亞も・・・・・いやいや・・・・・」雛子や亞里亞も青ざめながら首を振った、恐らく妹全員も嫌がるだろう。サンジ「てめェは、もっとマシな物狩ってこれねェのか!!!」ゾロ「うるせェな!!・・・食えりゃあ、なんだって同じだろ!!」ナミ「冗談じゃないわ!!・・・私、ネズミとカエルだけは絶対に嫌だからね!!!」サンジ「みんなが、嫌がってるじゃねェか!!・・・捨ててこい!!!」ゾロ「おれに指図するな!!」ルフィ「そんなに嫌なのか?・・・おれは食えるぞ」何でも食べられるハングリー派のルフィは言う。(只今、ネズミをかじっている最中である・・・)サンジ&ウソップ「おめェと一緒にするな!!」2人は青筋立てながらルフィにつっこんだ。千影「・・・・・これはいいね」と・・・1人だけ気に入っている人がいた。千影「ゾロさん・・・・・このコブラとカエルを頂きたいのですが・・・・・」ゾロ「別にいいけど・・・何に使うんだ!?」千影「実験の材料に使いたいんだ・・・・・冒険するための・・・・・秘薬をね・・・・・」ゾロ「秘薬だと?」千影「ああ・・・・・効能を与えるためにはこれらの材料が不可欠なんだ」ゾロ「おい、よくわかんねェぞ・・・」サンジ「てめェの頭だから、わかんねェだろうが!!」ゾロ「斬られてェのか!! こらァ!!!」ゾロはぶちキレる寸前だった。ナミ「やめなさいって言っているでしょう!!・・・何度言わすの!!!」ナミは口ケンカしている2人に怒鳴った。これで3度目である。ロビン「急いで出航の準備に取りかかった方がいいんじゃない・・・航海士さん・・・目的地が尋常じゃない状況に手間取ると間に合わなくなるかもしれなくってよ」デッキサイドの船縁で本を読んでいるロビンが言った。ナミ「ええ、わかっているよ」衛「早くしないと、あにぃに会えなくなっちゃうよ〜」ナミは次の場所へのログの確認をした。島を取り返すまで残り3日! いざ出航だ!!
続く
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