シスプリワンピース 第7章 『ダークプロジェクト』の悪辣な作戦
妹達の住む離島・・・ショッピングモールの少し離れた場所にある役場では、ジャドー率いる幹部らが結集し、秘密結社『ダークプロジェクト』を設立するための作戦会議が開かれた。テツ・・・第一幹部、ムキムキの実を食った超人〈パラミシア〉系の能力者。グランドラインでは『海賊殺人鬼』と恐れられていた賞金稼ぎであったが、海賊になりそしてシャドーの元で組織を企てる。ジュアリ・・・ジャドーの司令官として指揮するエダエダの実の能力者。女性の中でも最高幹部で、彼女に一度狙われた者は二度と生きて帰って来られないという残忍な性格である。トシコ・・・第二幹部であり、ナゾナゾの実の能力者。戦闘力もジュエリに次ぐ実力派で計算高、不思議な技による攻撃は見極めにくい程の危険なものが多い。ブリブド・・・フナ魚人で、魚人流ムエタイの使い手として海賊をしてきた男が今はシャドーの傘下に置かれ、第三幹部の地位にあたる。オッカル・・・準幹部にあたる男で、シカシカの実を食った動物〈ゾオン〉系、シカ人間である。気孔術で相手の病気を治療したり、殺したりすることができる。彼らはジャドーの指令によって動き出している『バロックワークス』残党狩り(ジャドーが嫌うため)・・・つまり、生き残ったナンバーエージェント〈オフィサーエージェント〉達を始末するためでもあったが、最も当社の名誉としての重大な任務を果たすための集団である。そのため、失敗も許されない。壁に貼り付けた屋内子時計の音のみが聞こえる重たく静かな室内では、ジュエリを指揮下に4人の幹部達が席について待機している。ジュアリ「オッカルも顔を見せ、ようやく全員が揃った所で作戦会議を始めるよ!!」ゆっくりと中央の円卓の周りを歩きながら、彼らの前に来た。テツ「その前に、おれ達のボス〈社長〉はどこにいる・・・」誰もが侵入できない重々しい室内をテツはちらりと見回した。モヒカン頭にサングラス、上半身は1枚の薄手のチョッキ、そして黒のスパッツを着用している。全身が図太い筋肉質のマッチョな大男である。ジュアリ「心配しなくても、直に現れるよ!」何も変哲もなく答えた。すると、彼女のすぐ隣の床から薄黒い怪しげな光が発し、壁から円卓まで収まる程度の範囲から現実では考えられない円形の空洞が突如出現した。そこから、なんとジャドーが頭部からゆっくりと現れたのだ。異次元空間から出没したような現象に幹部達の重たい空気が一瞬で途切れた。ジャドー「ようこそ、我がダークプロジェクトへ!!!」広い密室全体が、響くようなドラ声で紹介し、不遜な態度で中央の円卓に座った。ホール・ジャドー・・・アナアナの実の能力者、懸賞金1億3千万ベリー、前科多数犯。太い胴回りに濃いワインレッドのスーツを着こなし、ドラキュラのような黒いマントを羽織っている風貌は、人をかりた悪魔のようだ。彼の武器として、フォーク型の槍には、生々しく人の血痕が残っている。目は細くいんけん顔、貫禄があるため、背丈もそれなりに高い。目的を達成する為には手段を選ばない性格なだけに、緊迫する幹部達は、すえ恐ろしく彼を見据えている。ジュアリ「ボスが出席するだけでも、流石に迫力が違いますね!」ジャドー「フン、ところで、指令通りにナンバーエージェント共を1人残さず片づけたのか!?」銜え煙草に火を着けながら、問い質した。トシコ「ご心配なく・・・われわれが見た限りでの生き残った奴らは全て始末しました」恐る恐るトシコが冷静な口調で頭を下げた。黒のショートヘアで鋭い目つきをしている表情の割には少し幼さを感じさせる若い女だ。赤白まんだら模様の水着に短い巻きスカートを着こなし、ロングブーツには彼女の1つの武器、短剣を1本ずつ収めている。見た感じで気が強そうと言うより、むしろ幻想的で謎めいたイメージが強く意識している。ジャドー「すると、あとはニコ・ロビンだけだな!!」ジュアリ「ニコ・ロビンか・・・」ジュアリは冷たい表情でつぶやく・・・黒褐色のセミロングは少し癖毛があり、つり目でやや長い鼻のニヒルな表情は冷徹さを感じさせるような八頭身の悪女だ。戦闘コスチュームとして、黒のハイレグの上に灰色のチョッキを着こなし、コーディネイトなブーツを着用している姿は彼女自身のセクシーさを引き立てている。テツ「それにしても不可解だ!!・・・このグランドライン、あんなザコ共が元七武海の幹部になってたことがな!!」無愛想な顔をしてバロックワークスのナンバーエージェントの事で不満に思った。ブリブド「クロコダイルが、それなりの実力しかねェに決まっているからだろう!!」テツ「チィ、あんな連中の始末・・・われわれに与える指令にしては物足りねェぜ!!」ジャドー「まあ、そう息上がるな!・・・この手配書を見るがいい・・・」ジャドーは、煙草を吹かしながら円卓の上に3枚の手配書を並べた。テツ「これは・・・麦わら一味の賞金首か!!」テツは瞠目した。その手配書にはルフィの1億ベリーの賞金首とゾロの8千万ベリーの賞金首、そして幼いころのロビンの7900万ベリーの賞金首が載っている。いずれも高価な懸賞金だ。元賞金稼ぎのテツにとっては、願ってもない獲物だろう、強敵相手に気合いが入ると言わんばかりに・・・ジャドー「そうだ、この3人の合計懸賞金〈トータルバウンティ〉が2億5900万ベリー!!・・・こいつらを仕留めれば、その金額は丸ごとわれわれの手に入るというわけだ!」1つの作戦を計画通りにと思考する陰謀者ジャドーは興奮した。ジャドー「この懸賞金は、大手秘密結社『ダークプロジェクト』を設立するための資金にする・・・壮大な敷地を利用してな!!」ジュアリ「そのために、この町を解体したわけね」ジャドー「だが、忘れちゃいけねェ大事な事がもう一つある!」テツ「大事な事だと・・・」トシコ「それは何?」ジャドーが最も重要な計画を、態度をでかくしながら幹部達に説明する。ジャドー「なぜ、おれがこの島を略奪したのか・・・」トシコ「・・・」ジャドーの一言に幹部全員が再び静まった。ジャドー「この町の広場にあるからくり時計台と森林奥のプラネタリウムの中には、貴重な財宝が隠されてある!!」トシコ「財宝ですって!?」ジャドー「そうだ!!・・・その2つの財宝は政府でも鑑定が許可されており、利用が認められている・・・おれの部下に鑑定家をしていた奴がいてな・・・スパイとして潜入させ、財宝を調べさせたんだ!・・・結果その金額は、合計で100億ベリー!!」幹部4人「100億ベリー!!!」あまりにも高価に幹部達は驚きを隠せなかった。ジャドー「ヒヒ・・・100億と聞けば、ここら辺の海賊達は、目が放せねェだろう!!・・・ゴキブリホイホイのようにやってくるのは明かだ!」ジュアリ「つまり財宝目当てに息を付けてくる名のある海賊達を出鼻から仕留め、政府に収めるための収穫金を稼ぐってわけ」ジュアリは、幹部達に説明した。オッカル「なるほど・・・そう言うことか」オッカルはニヤッとした。髪は短くトゲのように上に立たせ、にやけた目つきで前歯2本が出っ張っているやや痩躯の男だ。全体的に軍用の衣服を着用している。ジャドー「政府との契約が結ばれたら、この島は自動的におれの物となる!!・・・もちろん、建物、財宝も全てだ・・・今まで飾りみてェにくさらせて置いたそこら住民らのちゃちなやり方とは全く違うのだ!・・・財宝は役立つための物にある!!・・・利用するためのものにある!!」ジャドーの欲深さで思想した持論をみんなに主張した。ジャドー「財宝の建物を看板に興業を繁盛させれば、まさに一攫千金を夢見る場所となるだろう・・・それがおれにとっての理想郷だ!!」何の躊躇いもなく、自虐的な笑みを浮かべるジャドーは、島の理想について語る。ジャドー「この理想郷を懇願におれは4年間も待った!・・・クロコダイルが討伐され、後任者を申し出に世界政府へ駆け付けた・・・そして、ようやく七武海としての夢が叶う時が来る!!」自分にとっての野望を叶えようと、とことん語りかけた。それを聞く幹部達は釘付けのように彼を凝視している。ジャドー「だが、今は正式に秘密会社になったわけではない・・・まだ、政府からの私掠許可が降りていないため、七武海でない状態だからだ」トシコ「するとこの島の権力体制も簒奪していないから、会社設立も許可できない状態なのね・・・」トシコは思考しながらつぶやく。ジュアリ「そんな小さいこと・・・ボスの立場からならお構いなしよ!」ジャドー「ああ・・・政府から自動的に承諾されるのはあさっての午後2時! その時おれはこの島の支配者となり、本格的な『ダークプロジェクト』の壮大な場所とするのだ!!!」興業発展、そして自分の利益のために世界政府直下の公認を称えようと幾重もの欺瞞を張り巡らせて島の統治下を目論む彼が、室内で声高く語った。ジャドー「そのためには、全ての計画を済ませることとして・・・ニコ・ロビンと麦わら一味・・・そして住民の中から逃してしまった約12人の小娘達・・・こいつらを先に始末しなければならねェ!・・・会社創設の資金としてな!!」ジャドーは幹部達に言った。ブリブド「資金と言ってもなぜ小娘12人まで始末しなければならねェのか?」ジャドー「悪魔でも、我が社の『ダークプロジェクト』は秘密組織だ!・・・裏組織は素性を他人に漏らさないためにも、一匹たりとも見逃す訳にはいかねェんだよ!!・・・ガキだろうが、赤ん坊だろうがな!!・・・」ブリブドの質問にジャドーが顔を歪ませながら強く言った・・・まさに極悪非道だ!ブリブド「そうか・・・」その時、ブリブドがようやく納得していた。全体的に人型と言っても半分は魚のような姿だ・・・顔形はコイのようだが口ひげがなく、体は淡黄色でうろこがあり、手足にバンテージ、ボクサー用のトランクスを着用している。彼は魚人島と呼ばれる島でムエタイを極めているため、その強靱な足腰は、高層ビル程度の高さのある岩盤を跡形もなく粉砕する程の威力を持っている。また、ボディも強く、ちょっとやそっとの爆風もびくともしないなど魚人ならではの強さがあるのが、このブリブドだ。トシコ「ところで、この島の住民達はどこへ行かれたのですか?」重要な作戦中に自分に関係ない人たちの事まで、トシコは訊問する。ジャドー「おれの能力による異次元空間の中で監禁している・・・なあに、放っておけばその内息絶えるだろう・・・仮に知り合いや国家の奴らが訪れたら人質として利用するのもいい、権力では今や世界政府の方が上だからな!・・・そのために捕捉したんだ。そう言えば12人の小娘らには、兄がいたらしいな!!・・・大勢の妹に囲まれた兄も、さぞ大変だろうが・・・小娘らを誘き寄せるための餌としてもいいかもな」ジュアリ「悪い人だね・・・吾ながら・・・」嘲弄するようなジャドーの外道な言葉にジュアリは目を失せながら微笑した。ジャドー「フン、関係ねェ・・・とにかく、まずはニコ・ロビン抹殺からだ!!・・・こいつはおれが最も嫌う女でな・・・以前はクロコダイルのパートナーとして裏組織にいた奴だ。その頃は『ミス・オールサンデー』と名乗ってたらしい」ジュアリ「へえ〜、あのロビンがね・・・」冷たい表情でつぶやくジュアリ・・・彼女もロビンに対して何か恨みがあるかのように嫌悪感を抱いていた。ジャドー「今は麦わら一味とつるんでいると言う情報があった」テツ「3人まとめて抹殺するのも悪くはないな・・・」ジャドー「それも良かろう・・・もし出来なければ、殺すけどな!!」テツ「チィ!・・・みくびるな!!」ジャドーの睨まれた言葉にテツは舌打ちをした。トシコ「ロビンの抹殺は、あたしにやらせてよ!!・・・麦わらは無理だけど・・・この女ぐらいならあたしにも出来るわ!!」トシコが自信満々とお願いした。ジュアリ「あんたじゃあ、ダメだ・・・あの女があんたよりも頭脳が上回っていたら、正直敵う相手じゃないよ!」トシコ「知力なら、負ける気はない!・・・それに戦力にも自身があるし、あたしの能力で攻めれば問題はないわよ!!」ジュアリ「いちいち一言多いよ!!・・・あんたは、黙ってアタイの指示に従えばいいんだ!!」トシコのしつこさに、彼女は怒ってむりやり言い返した。トシコ「ご、ごめん・・・」素直に謝った。ジャドー「それで、誰が抹殺するんだ!!」ジュアリ「まかせて!・・・ニコ・ロビン・・・ミス・オールサンデーはアタイが抹殺する!!」ジュアリは、髪をかき上げながら引き受けた。ジャドー「どちらにせよ・・・あさって2時までに済まさせれば良いことだ!・・・ま、本当なら抹殺者全員一緒にいたほうが、一番手っ取り早いがな・・・その時は、おれの能力でまとめて穴の中に吸い込ませ、餓死させて終わりにする」ジャドーは、高慢な態度でニヤリと笑った。オッカル「一応・・・念のために我々の部下、平社員500人も導入させるぜ」ジャドー「フン、準備がいいな・・・ま、部下なんざほとんど当てにならんがな」ジャドーは煙草を吹かしながら背中で言い捨てた。ジュアリ「確かに・・・」クールな笑みを見せたジュアリも同感した。ジャドー「とにかく、これがおまえ達への壮大な計画の総仕上げと言うわけだ!・・・『ダークプロジェクト』設立の最終作戦としてな!!」幹部4人「はッ!!!」返事ははきはきとしているが・・・ジャドー「たとえ、いかなる理由があろうとも・・・失敗は死だと思え!!!」幹部4人「お、おう・・・」顔が突然と凶悪に歪むジャドー・・・その一言が一瞬の内で幹部達の空気をぴぃんと凍てつかせた。* * * * *
ここは、広い空間・・・誰もいない・・・何も聞こえない・・・唯一存在しているのは空気のみ、その凛としたうす暗い虚空の場で1人の青年が目を覚ました。「こ、ここは、一体・・・」気色ばむ表情で青年は辺りを見回した。「僕はどうなってしまったんだ・・・」虚無のような空間の中で、うなだれる青年・・・実は妹達の唯一の兄である。りりしい顔つきで服装の着こなしもよく、妹達の面倒見が良い優しい性格の持ち主・・・【白並木町】の白並木学園に通う生真面目な高校生である。兄「そうか・・・僕達の島は天空の歪みによって吸い込まれ、途中で気を失っていたんだ・・・こうしては居られない!!・・・可憐ちゃん達を探さないと!」冷静に判断した兄は自分の焦燥感にようやく滲み汗がでた、妹達の生存の事である。兄「咲耶ちゃ〜ん!!・・・花穂ちゃ〜ん!!・・・千影ちゃ〜ん!!・・・雛子ちゃ〜ん!!・・・衛ちゃ〜ん!!・・・白雪ちゃ〜ん!!」妹達とはぐれ、苦渋しながらも必死に叫んだ!兄「春歌ちゃ〜ん!!・・・鞠絵ちゃ〜ん!!・・・鈴凛ちゃ〜ん!!・・・四葉ちゃ〜ん!!・・・亞里亞ちゃ〜ん!!」自分の声だけが反響する空間をひたすら走り回り、四方八方に叫ぶ。兄「ハァ、ハァ・・・みんな、聞こえたら返事をしてよ・・・可憐ちゃあああん!!!」そして喉が詰まりそうな位に大きく声を張り上げた!「可憐ちゃああん・・・」「・・・」
・・・
可憐「はッ! お兄ちゃん・・・」中央デッキの船縁で途方に暮れている可憐が、突如首をかしげた。兄の声がふと聞こえたのか・・・しばし心を奪われていた彼女の幻聴は、船が進行する際の小波の音によって一瞬の内で途切れた。不安に募りながらメインマストの方をみつめると、そこにはドンチャン騒ぎしているルフィとチョッパー、それを見て笑っているウソップ、雛子がいた。その後方にはゾロが胡座をかいて寝ている。ルフィ「どうした?・・・可憐、何かいたのか?」そこで品のない爆笑格好のルフィと視線が合った。鼻と口の間に立てている2本の割りばしを取りながら言った。可憐「今、お兄ちゃんの声がしたの!」その一言で、ドンチャン騒ぎがピタッと静まった。雛子「え、おにいたまの声が!?」兄の事で雛子は、すぐに反応した。ルフィ「どこから聞こえたんだ!」可憐「わからないけど・・・お兄ちゃんが、可憐を呼んでいたみたいなの・・・」哀しげな口調で言った。ウソップ「おいおい・・・空耳じゃねェの?」ウソップは少し冗談っぽく言った。可憐「ううん!・・・確か助けを求めているような呼び方で言っていたの・・・」この時、可憐は思いっきり首をふった。雛子「可憐ちゃん・・・きっとつかれているんだよ・・・ずっとおにいたまのことで頭がい〜っぱいになっていたから・・・」チョッパー「そうなのか!?」人の心理を全く読めないチョッパーは、気が付かなかったらしい。雛子「ヒナわかるもん・・・可憐ちゃんとはなかよしだから・・・」可憐は、雛子にとっての良き理解者であり姉妹でもあるため、気持ちとしてはよく知っているだろう。雛子「可憐ちゃん、一緒におへやに行こう・・・今度はヒナが、ご本を読ませてあげるね」可憐を元気付けさせようと雛子が彼女の袖を引っ張りながら、船室へ誘い込む。可憐「ありがとう・・・雛子ちゃん・・・」憂鬱な気持ちで雛子にお礼をした。そして、ルフィ、ウソップ、チョッパーを後に2人の少女は船室の中へと入っていった。天候は晴・・・妹達の島へゆっくりと進行中のゴーイング・メリー号は、ナミがオルゴールの曲の音量を合わせながら進路を取っている。ナミ「だいぶ音質も良くなっている・・・このまま進めば明日までは余裕にたどり着けるわ」ナミは、引き締まったような表情でつぶやいた。花穂「赤星のした〜♪・・・きせきの〜あるじ〜♪」その横際で、花穂がオルゴールのメロディを聴きながら鼻歌を口ずさむ。ナミ「あんた・・・その歌わかるの?」花穂の嬉しそうな笑みに、つい釣られてしまう。花穂「うん!・・・この曲はね、去年のクリスマスの日にお兄ちゃまを歓迎するために、みんなで歌ったソングなの」ナミ「へえ〜・・・」ナミは珍しそうな花穂の言葉に、つい口が動いた。花穂「そしてこのオルゴールは、お兄ちゃまが花穂たちみんなにくれたものなの・・・お兄ちゃまが何処で買ったかはわかんないけど・・・そのメロディが偶然、花穂たちの歌った曲が収録されていたから、今はとても気に入っているの」ナミ「そうなの・・・でもこれがエターナルポーズの役割をしていることは誰も知らなかったでしょう」花穂「うん!・・・なんか不思議よね・・・」ナミ言葉に花穂は無邪気な口調でつぶやいた。にっこり笑顔で、はっきりと・・・ナミ「あら?・・・あそこにみんなが集まっているわね」ナミはデッキテラスの方を向いて言った。花穂「えっ?・・・何かあったの?」花穂も気になってデッキテラスの方を見つめた。ナミ「わからないけど・・・亞里亞の事らしいわよ・・・どうかしたのかしら・・・」花穂「ほんとだ〜!・・・ちょっと見てくるね」心配そうに花穂は、みんなの所へ駆け付けた・・・花穂がデッキテラスのテーブルまで来ると、そこには亞里亞が悲しげな顔をして椅子に座り込んでいた。彼女の滲み出る涙にみんなが困惑していた。咲耶「あ、花穂ちゃん・・・」花穂「亞里亞ちゃんどうしたの?」花穂が話してみた。亞里亞「亞里亞・・・・・とてもげんきないの・・・・・兄やに会えないから・・・・・」長い間、兄と会えない日々がついに耐えきれなくなったのか・・・彼女は動くことすら出来なかった。咲耶「だから大丈夫よ・・・その内きっと会えるって!・・・そのためにルフィさん達も協力しているから・・・ね」お子様をなだめるように咲耶は、何度も亞里亞を慰めた。亞里亞「はやく兄やに・・・・・会いたい・・・・・くすん・・・・・くすん!」それでも亞里亞は静かに首を振った。そして、小さく嗚咽する。咲耶「あ、亞里亞ちゃん・・・」泣き始める亞里亞に咲耶は戸惑った。夕方になり、いつものの晩餐をしているナミ達が和気あいあいとお話をしている。ルフィは毎度のこと、有りっ丈のおかずをばかすかと口に頬張り・・・サンジに「食い過ぎだ!」・・・と足蹴りされている。白雪「あ・・・」配膳中の白雪が舷窓から亞里亞を見つめた。空が薄暗くなる雲の下でも亞里亞は、長時間もテーブルで沈黙していた。涙もろい彼女の哀しみは、まるでマッチ売りの少女のような、ひとりぼっちのお姫様だった。白雪は居た溜まりもなく亞里亞の所に来た。白雪「ハ〜イ、亞里亞ちゃん!・・・どうぞ、これで元気だすのですの!」白雪がニッコリと、甘いおやつを亞里亞が座っているテーブルの上に置いた。亞里亞「・・・・・」どうやら、口に入りたくない様子だ・・・いつもなら、目を輝かせて幸せ笑顔で食べる彼女が、今は見向きもしない。そんな信じられない事態に白雪は余計に不安な気持ちになってきた。雛子「亞里亞ちゃんも元気なくしているってホントなの!?」その時、慌ててやって来る雛子が少しばかり息を切らしていた。可憐を元気付けるために、船室で鞠絵と一緒に本を読ませてあげていたのだ。その理由で、亞里亞の急な事態は彼女には分からなかったのである。白雪「はい・・・おやつも食べたくないみたいなのですの・・・」白雪が元気なく答える。雛子「おにいたまがいないから、きっとサビシイサビシイ病にかかっているんだよ・・・」半泣き姿の亞里亞の頭をなでながらこう呟く・・・その切ない哀しみが世界に響くかのように・・・亞里亞「くすん・・・・・」雛子の話を聞いた亞里亞は次第に涙が滲む。雛子「亞里亞ちゃん、元気だそうよ!・・・ヒナだっておにいたまに会えないとサビシイサビシイ病にかかるんだよ・・・でもゾロさんが泣かないで頑張るからって約束もしたんだし・・・それに、ヒナは亞里亞ちゃんと一番のなかよしだから・・・」必死に慰める雛子は、可憐の時よりも切なく見えた。なぜなら、雛子は亞里亞といつも一緒に遊んでいたかけがえのない親しい仲だからである。おそらく妹の中でも、最も良き仲だろう。ウソップとチョッパーの仲よりも・・・亞里亞「兄や・・・・・くすん・・・・・」しかし、彼女はどうしても機嫌が戻らないようだ。雛子「亞里亞ちゃん・・・」寂しさが付きまとう亞里亞に、雛子は一層辛くなった・・・幼い2人のシビアな表情を見て、白雪は口を挟むことができず、ただ聞くだけしかできなかった。厨房のカウンターでは、咲耶達が亞里亞の事でロビンに相談している。咲耶「可憐ちゃんだけでなく、ついには亞里亞ちゃんまでしょぼくれているみたいで・・・」舷窓の方を眺めて、悲しみを抱いている亞里亞の様子を打ち明けてみた。ロビン「そうね・・・彼女の様子から見て判断すると、やはり前のお嬢ちゃんと同じ心境の可能性が高いわね」咲耶「そう思います?」ロビンの答えに咲耶は疑問をはさんだ。ロビン「あなた達は、兄の事が好きなんだよね・・・」四葉「ハイ、兄チャマを超チェキしたい程、好きデス!」トントン拍子に四葉は答えた。衛「もちろん、大好きだよ!」坦懐な衛も答える。花穂「花穂も!」花穂以下他の妹たちも当然同じ気持ちなるだろう。でないとタイトルの『シスター・プリンセスRe Pure』の意味がなくなってしまう・・・ロビン「熟愛は個人によるけど、それでも会えない日々で寂寥感が心の中に溜まり、ネガティブな発想が多くなる傾向に捕らわれているんじゃないかしら・・・人間、絶望すると何もしたくない気持ちになってしまうものなの・・・」咲耶「そうですよね・・・は〜・・・」次々と考え込んで嘆息する咲耶・・・亞里亞の気持ちをうち解けないことにショックを隠しきれなかった。ルフィ「ん、咲耶?・・・何落ち込んでいるんだ?」ダイニングテーブルで、腹ごしらえのルフィが咲耶を見て声をかけた。咲耶「ううん・・・ちょっと亞里亞ちゃんのでうち解けないのがあってね」屈託のないルフィの言葉に、咲耶は戸惑いぎみに首を振った。ルフィ「あれか?」ルフィは明るい笑顔で舷窓の方を覗いた。デッキテラスで気落ちしている亞里亞と一生懸命慰めている雛子、白雪が見えた。咲耶「ええ、昼間からずっとあのままの調子で気落ちしているんです・・・」衛「あにぃに会いたくて溜まらないから、1人で寂しく抱え込んでいるの・・・」ルフィ「そうか!・・・そんじゃあ、おれが元気付けさせてやるか!」ルフィが明るい笑みを浮かばせながら、厨房から出た。咲耶「ちょっと、ルフィさん!」何も考えないですぐに出て行ったルフィに、咲耶は慌てた。ルフィがデッキテラスの所に来た。雛子「あ、ルフィさん!」白雪「何かするのですの・・・」厨房から突然出てきたルフィ、2人は唖然する。ルフィ「亞里亞!・・・今からおまえにいいもの見せてやる、来い!!」この夕焼けに何かいいものがあるのだろうか・・・ルフィは強引に亞里亞を引っ張っていく。亞里亞「いや〜・・・・・亞里亞何もしたくない・・・・・はなして!」亞里亞は思いっきり首を振りながら、必死で抵抗する。ルフィ「いいから、来るんだ!!」椅子が倒れ、彼女の事なんかお構いなしのように強制的に片腕を引っ張り、主甲板へ駆け付ける。引っ張られた亞里亞は、ルフィの走る勢いで床から浮いている。亞里亞「くすん・・・・・くすん・・・・・」泣いている亞里亞に、雛子や白雪も着いて行く。そして、羊の船首像の上で、ルフィがまたがり、亞里亞を前に座らせた。そこは、船長ルフィの特等席である。ルフィ「見ろよ、おまえの兄ちゃんがいるぞ!!」後方にまたがっているルフィが夕暮れの空を指さした。亞里亞「兄や?」その空には兄の輪郭を描いたピンク色の入道雲が鮮明に見えた。寂しさと哀しさで涙を流した亞里亞が突然泣きやんだ。ルフィ「そうだ、兄ちゃんがおまえをずっと見ているぞ!」亞里亞「わ〜い・・・・・兄や・・・・・捕まえたい!」ようやく亞里亞に笑顔が戻った。進行中の船の船首像に座りながら、手を伸ばして届くはずもない雲を捕まえようとしている。ルフィ「よし!・・・兄ちゃんを捕まえに行くか!」ルフィは屈託のない笑みを浮かばせながら、亞里亞を励ます。亞里亞「うん・・・・・」すると、亞里亞は無邪気な笑顔に戻った。白雪「あ、亞里亞ちゃんが笑ってますね」雛子「亞里亞ちゃんは、入道雲をおにいたまだとおもっているんだよ」亞里亞の喜ばしい黒水晶の瞳を見て、雛子は安堵の息をついた。衛「見て、亞里亞ちゃんが笑っているよ!」花穂「あ、ホントだ!」咲耶「よかった・・・」ロビン「これがうちの船長さんの魅力よ。仲間、友達なら誰でも寛大になれるのが彼の闊達なところなの」四葉「あの入道雲をすぐにチェキデスよ!」デッキテラスからでは、ロビンと妹達が彼らに気付かないように、ルフィ達の行動を一部始終と見ていたのだ。哀しさで塞ぎ込んでいた亞里亞が、ルフィの大胆な励ましによってようやく笑顔を取り戻した。その行動を見て妹達は、ホッと一安心した様子だった。それから夜が更けて、みんなは昨日と同じ場所で眠りについている。船室では暖炉で部屋中が温かくなっていて温もりがいい。咲耶は鞠絵の寛容な交代が許可されて、高級な寝室で気持ちよく眠っている。そして鞠絵は、その隣の大きい毛布の中でぬいぐるみをくるんでいる雛子と一緒にすやすやと眠っている。多少の船揺れは気になるが、チョッパーの手当てと千影の秘薬によって徐々に慣れつつある彼女、どんな時でも常備薬としての酔い止め薬は常に欠かせない。小波の音だけが聞こえる中央デッキの方では、やはりルフィ以下5人の男達が野宿寝入りをしている。ウソップ「ひ〜・・・何で夜になるとこんなに寒くなるんだよ!・・・女どもはいいよな・・・船室で気持ちよく眠れてよ〜」昨日より一段と寒くなり、寝袋の中でくるんでも底冷えが抜けない程の低温になっている。ウソップは体をぶるぶると震えながら、横たわっていた。チョッパー「おれ、寒いのは平気だ、暑いのはダメだけど・・・」チョッパーは少し自慢げに言った。ウソップ「暖かそうだな〜、よし、今日はおまえの体にくるんで寝るぞ!」チョッパー「や・め・ろよ、おまえ!・・・おれは毛布じゃねェぞ〜!!」いきなり抱き付くウソップにもがいているチョッパー、静寂な夜のデッキで2人はジタバタと暴れている。ウソップ「どう見たって毛布のカムフラージュじゃねェか・・・いい加減その着ぐるみ脱げよ!」チョッパー「何だと!・・・トナカイをバカにする気か・・・コノヤロ〜!!」怒ったチョッパーは人型に変身し、体をでかくしてウソップに強く言い返した。ウソップ「わああ!・・・猛獣、化け物!!」チョッパー「だれが、バケモノだ!!」ゾロ「やめろ! おまえら・・・寝静まるみんなが起きちまうじゃねェか!!」中央デッキの片隅で胡座をかいている船番中のゾロが注意した。ゾロ「ん・・・」その時、ゾロは何か怪しげな物を目にした。ウソップ「どうした?ゾロ」ゾロ「なんだ!? あの妙な光は・・・」この暗い夜、船が進行する少し東よりの地平線付近の方角に紫色の丸い光がほのかに見えた。人魂なのか・・・その奇異千万な光は、空間の歪みが生じたかのようにもやもやと動いていた。ウソップ「おいおい・・・こんな真夜中に、まさかあの光が襲ってくるんじゃねェよな〜(恐)」ウソップは恐怖心の余りに、腰が引け始めていた。チョッパー「や、やめろよ!・・・ウソップ・・・恐くなるじゃないか!!」ウソップの臆病風に吹かされたチョッパーが、遠くにある光を見てだんだん恐くなってきた。ゾロ「バカ、そんなはずがあるか!・・・どの位の距離があると思っているんだ!」ウソップ「んな事言ってもよ〜・・・恐んだよ!」何が起きても動じない豪胆なゾロに対し、ウソップは恐々と足をガクガクさせている。ゾロ「じゃあ、見るな!!」無愛想な顔で簡単に言った。チョッパー「それより進路は大丈夫なのか?・・・ゾロ!・・・さっきからオルゴール使ってないけど・・・」ゾロ「うっとうしいから閉まっておいた!」ウソップ「何いっているんだ、おまえ!!・・・このオルゴールが島の方角を示すものとなっているんだぞ!!・・・これを使わないと目的地にたどり着けねェんだぞ!!」ゾロに大声で言って聞かして、彼の手元にあるオルゴールをすぐに使った・・・そして異音、雑音ともに無く、良好に流れていた。ウソップ「どうやら、今の進路で間違い無いようだ・・・って・・・ひ、光が・・・」すると、先程の光は突然消えた。やはり亡霊か・・・ゾロ「光が、どうかしたのか!?」ウソップ「光がき、消えた・・・やはりお化けだったんだよ〜!・・・あれ・・・」光が消失したのを見て、ウソップは驚愕した。チョッパー「わああ! 助けてくれ〜!!」お化けと聞いてチョッパーも驚き、慌てまくった。ゾロ「静かにしろって!! たかが消えただけじゃねェか!」「「「うおおお!!」」」ウソップ&チョッパー「わあ、なんだ!・・・なんだ!」突然の喚声に恐がりの2人は慌てた。ルフィ「ぶっ飛ばすぞ〜・・・むにゅ、むにゅ・・・」その喚声は、メインマスト付近でルフィが寝言を言っている声だった。酔いつぶれて堕落したような格好で、爆睡している。ウソップ「なんだよ〜・・・脅かすなよ・・・」チョッパー「違うのか、よかった・・・」2人はホッとして、額の汗をはね除けた。緊張感がほぐれたせいか、体は心拍数を高めるためのエネルギーによって温かくなり、それに伴って冷や汗も多くなっていた。サンジ「ナミさ〜ん・・・愛・し・て・る♡・・・」目を瞑りながら、くるんでいる枕にキスしようとしている。その幸せそうな寝顔は、おそらく自分の妄想した夢の世界に入っている最中だろう。ゾロ「全く、度を超えたアホ丸だしだな!・・・何想像してやがるんだ、クソコックは・・・」片隅に座っているゾロが、みっともない寝方をしているサンジを見て呆れ果てた。衛「う〜ん・・・うるさくて眠れないよ〜」ルフィ、サンジの寝言とウソップ、チョッパーの悲鳴で目を覚ましてしまったのか・・・サンジのすぐ横に明々と照らされているテントの中から寝ぼけまなこの衛が出てきた。ウソップ「お、おまえ!・・・この『キャプテ〜ンウソップ』様のせいにするのか!!」ゾロ「おまえのせいでもあるだろうが!!(ツッコミ)」ゾロは青筋立てて、ウソップをしばき倒した。衛「なんか、寒い・・・」ボーっとした顔で両腕を組みながら体を震わせている・・・この時の衛は、分厚いパーカーとスパッツを着用している。ウソップ「この海域ではな、夜になると極度に寒くなるんだ・・・」ウソップは夜空を見上げて、つぶやいた。衛「うん・・・どの位で、島にたどり着けるの?」うなずく衛は尋ねてみた。ウソップ「ナミが言うには、今日の明朝には着くらしいぜ」衛「明朝か・・・あにぃは、どうしているのかな・・・」衛も首をかしげ、そのまま夜空に吸い込まれそうなほどに、爛々と輝いている星々を注視している。兄の事をふと思い出しながら、寂しそうな瞳でつぶやく衛は、どこかしら切なさを帯びていた。ウソップ「衛・・・それよりおまえ、そのテントはおれ達のものじゃねェのか?」衛にとっての世界を取り戻すかのように、ウソップが別の用件を言った。衛「サンジさんが借りて良いって言っていたから、使わせてもらっているの」チョッパー「おお、テントの中は暖かそうだぞ〜」テントの中を覗いたチョッパーが珍しそうな表情で言った。衛「ふふ・・・船の上のキャンプもいいなあ・・・と思ってお願いしたんだよ・・・ある意味、蛇足しているけどね」ウソップ「いいよな〜、うらやましい位だぜ!・・・全くこのラブコックのせいで・・・何でおれ達には、こんな恐くて寒いデッキにいなきゃあいけねェんだよ!」ウソップは、眠っているサンジを睨み付けた。衛「これで、あにぃと2人きりでキャンプでも出来たら嬉しいなあ・・・いっぱいお話してさ・・・」この夜、テントで寝ていた衛は兄とキャンプがしたくなってくる気持ちだった。つぶやくその願望は彼女にとっての一番のおもてなしだと思っている。ゾロ「そのために、テントを借りたのか」衛「うん、まあ・・・」鋭く伺うゾロに、衛は少し戸惑いぎみになった。ウソップ「まあまあ、おまえ達を眠らすための子守歌として、ここでおれ様の勇敢な『カームベルト武勇伝』のお話でもしよう!」ウソップは胸を張って、高慢に言った。衛「初めて聞くお話だね・・・ウソップさん、もしかして闘ったの?」ウソップ「おお、もちろんだぜ〜!」今度は仁王立ちでから威張りした。チョッパー「おお!・・・すげェ、ウソップ!!」ゾロ「信じるな、チョッパー!・・・ウソに決まっているだろう」それから4人はこの後、静かに眠った(笑)・・・続く
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