シスプリワンピース

 

第9章 ジャドーの忌まわしき犯罪

 


 

      アナアナの能力よって、歪みの中に吸い込まれ、異次元空間に閉じこめられたゴーイング・メリー号・・・外力の加わらない船は一定速で進行している。

   

   咲耶「ここは、一体どうなっているの・・・」

   可憐「恐い・・・」

      妹達は恐々と全員が一まとめになって、くっついている。

  ロビン「ジャドーの能力によって吸い込まれた空間・・・ブラックホールの中・・・」

  サンジ「薄暗くて、よく見えねェ!・・・だれか、灯りを着けろ」

      タバコの白煙が濛々と空間内を蒸し上がっていくしか見えない場所で、サンジが声を上げた。

チョッパー「うん・・・わかった」

チョッパーは、すぐにデッキハウスの操舵室に入って、みかん畑の両サイドに設置されている投光器と、メインマストの見張り台に取り付けられているスポットライトを点灯させた。

明々と照らされた空間の周りには、一定速で動いているもやもやとした歪みが、全体的に映っている。

   春歌「周りを御覧になるだけでも、本当に禍々しい空間ですわね・・・」

ウソップ「お・・・おれ達はどうなっちまったんだよ~!」

      辺りの空間を見回しながら、うなだれた。

   ゾロ「閉じこめられたんだろ!・・・こん中に・・・」

      背中で言い捨てるような態度でつぶやいた。

ウソップ「冗談じゃねェよ!!・・・ここで・・・のたれ死ぬなんて、おれはいやだよ~!」

      ウソップは、少し泣きごとを言った。

    衛「うそよ~・・・ボクもいやだよ~!」

  亞里亞「兄や・・・・・助けて・・・・・くすん・・・・・」

      以下妹達も同様に嘆いている。

   ナミ「この空間に生起する現象の法則性と相対性を理解すれば、脱出できるんじゃないかしら・・・」

      計算高のナミは、異次元空間に関する概念を思考した。

ウソップ「おいおい・・・そんな簡単なものじゃねェだろうが!・・・こんな恐ろしそうな空間をよ・・・どう理解しろと言うんだ・・・」

 サンジ「ジャドーの能力だからこそ、このような歪みの現象ができるんだろうな・・・」

   千影「能力だからではない・・・・・ブラックホール自体が・・・・・歪んでいるからだよ・・・・・」

      メインマストの中央で千影が、首を傾げながら答えた。

  サンジ「おお~・・・千影ちゃん・・・ジェラシー

      クールな表情の千影を見て、サンジは毎度の事、目をハートにしながら、デレデレとした。

   ナミ「はいはい・・・あんたは邪魔!・・・あっちへ行って!!(怒)」

  サンジ「ナミさ~~ん・・・おこんないで~~

      呆れたナミはメロリンハート目のサンジの耳を強く引っ張りながら、船縁に放り投げた。

   千影「ブラックホール内の空間は・・・・・強大な重力場によって・・・・・歪んでいると言われている・・・・・」

      中央デッキで、千影が空間の理論をみんなに説明する。

ウソップ「よく見ると、空間が曲がっているみてェだな・・・」

      ウソップは、首を傾げながら空間を見上げた。

チョッパー「ほんとだ・・・すげェ~!」

      チョッパーは、恐る恐る辺りを見回した。

千影「空間には・・・・・ユークリッド空間、ロバチェフスキー空間、リーマン空間の3通りある・・・・・ユークリッド空間はごく普通の平坦な空間・・・・・ロバチェフスキー空間は馬の鞍のような“へこみ”を持つ空間・・・・・リーマン空間は逆に“膨らみ“を持つ空間・・・・・その中でもブラックホールは、球面のように三角形の内角の和が180度より大きくなるような空間・・・・・つまりリーマン空間なんだ・・・・・」

  ロビン「確かにブラックホールは膨張した歪みの場としての空間、さらにここは異世界に依存するような場でもあるわ・・・」

ロビンが、アナアナの能力について、上乗せで説明する。

   ナミ「アナアナの能力だからかしら!?」

      ナミが尋ねた。

ロビン「ええ・・・犯罪者だらけの異世界、人物対称な異世界、虚無の異世界など・・・能力特有の異質な空間だからこそ現実にない何かを実感する奇妙で様々な異世界が存在しているの・・・それだけに異世界は、過酷で恐ろしい試練も待っているわ」

   咲耶「か、過酷で恐ろしい試練が待っているということは・・・私達はこれからその試練を乗り越えないと出られなくなっちゃうわけですか!?」

  ロビン「そこまでは行かないと思うけど、用心しといた方がいい・・・ジャドーの能力は、私にもわからない不明な点がいくつもあるから・・・」

  サンジ「心配しなくても・・・咲耶ちゃんとレディー達はおれが守る!!」

      プリンスサンジは、騎士道らしく咲耶達の前に立って精悍な顔で言った。

   咲耶「あ・・・ありがとう・・・サンジさん・・・」

      咲耶は、少し苦笑いした。

 

      ゴーイング・メリー号の中央デッキでルフィ達と妹達は、無限に続くような異次元空間を恐る恐ると用心しながら進行していく・・・

 

      そのとき・・・

 

   咲耶「きゃあ!!・・・骸骨!!」

 亞里亞「コワイ・・・・・」

   千影「違う・・・・・ミイラだよ・・・・・」

      そこには、人々の息絶えた屍が疎らに棄てられている。老人や女性、そして子供までも・・・

 ロビン「牢獄だ・・・彼の能力はその中の人間をも閉鎖することもできるの・・・食わず飲まずと・・・」

      ロビンは、つぶやくように言う。

   ナミ「もしかして・・・ここが虚無の異世界!?」

  ロビン「ええ・・・」

ウソップ「すると、こいつらの島の住民たちも、今頃その獄の中に閉じこめられっぱなしなのか!?」

      妹達を指さしながら言った。

  ロビン「人質として囚われている身だから・・・可能性はないとはいえない・・・」

      否定連続に言ったロビンは、ウソップを背中で言い捨てた。ジャドーのこの非道なやり方には、流石の冷静な彼女も躊躇した。想いのよらない最悪な場面に・・・

      とそれを聞いた可憐が・・・

   可憐「いやあああ!!!・・・お兄ちゃんが!!!」

      いきなり激しく号泣した。

   白雪「可憐ちゃん!!!」

      彼女の突然の事態に、白雪が急きょ心配になった。

   可憐「お兄ちゃんもこんなになるなんて・・・いやよ!!!」

      この時の可憐の心境は、兄が監禁されて屍状態じゃないかと推定することでかなりの悲痛を味わっている。

   咲耶「そんな!・・・うそよ!!!」

      同じように咲耶も号泣する。

     「「「うう・・・いや~!!(泣)」」」

      そして、千影を除く妹みんなも色を失った。

   ゾロ「泣くな、バカ野郎!!! まだ、そうだと決まったわけじゃねェだろう!!!」

      そこで、唐突にゾロが怒りをあらわにした。

  サンジ「おい、てめェ!! レディー達に向かってその言葉遣いは何だ!!」

      ゾロの下卑た言葉に、騎士道のサンジが反抗した。

   ゾロ「うるせェ!!! エロコック、てめェはどっか行っていろ!!!」

      事態のわからないサンジなんかに・・・と思ったゾロは、激しく言い返した。

  サンジ「なんだと、こらァ!!!」

      荒れている2人はお互いに前襟を捕まえて、睨み付けた。

   千影「やめて・・・・・喧嘩はよくない・・・・・」

   ゾロ「何ッ!!」

  サンジ「な、なんだ!!・・・体が言うこときかない・・・」

      千影が珍しく、水晶玉で魔術を使って2人の喧嘩を阻止した。理不尽な争いをしている大の男2人が、更にはたった1人のかよわい少女にも止められようなんて・・・はっきり言って顔色なしだった。

   雛子「お願い・・・みんな泣かないで・・・」

   鞠絵「そうです・・・ゾロさんと約束したんですもの・・・泣かないで頑張るからって・・・」

      以前にゾロと約束した為であって、鞠絵は泣くのを堪えている。

   雛子「ヒナは泣いていないよ・・・絶対に泣いていないよ・・・ううッ!」

      と言いながら自分は泣き崩れている雛子、兄の事が心配で心配でたまらないのだろう。

 亞里亞「亞里亞も泣いていないです・・・・・くすん!」

      状況がわからぬままの亞里亞は、みんなが哀しく泣いていたため、自分はもらい泣きしている。

   鞠絵「ですから、皆さんを信じましょう・・・」

    衛「うん・・・わかっているよ・・・」

   四葉「四葉も信じるデス・・・」

   花穂「絶対に・・・お兄ちゃまに会えるよね・・・」

   鞠絵「ええ!・・・勿論です・・・」

      鞠絵の温かい励ましのおかげで、みんなは泣きやんだ。

   可憐「お兄ちゃん・・・くすん、くすん・・・」

      しかし、可憐は未だ涙が絶えない・・・

   ナミ「すぐに、あんた達の兄ちゃんに会いに行こう・・・」

      みんなの健気な気持ちが伝わり、ナミも励ました。

 

      しんみりさすような船〈ゴーイング・メリー号〉の中、少し時間が経ち、みんなは周辺を見回した。

 

  ロビン「それにしても・・・実に愚かであると言わざるを得ない・・・」

      地平線のない静まった空間で、数々の屍を見たロビンは、ジャドーに対しての愚僧さに軽蔑した。

  ロビン「己の独占欲を満たす・・・それだけのために・・・何人もの未来のある罪なき人間達を虐待、そして監禁し自由を奪った・・・そんな人達の悲痛な声は、あまりに自己中心的なこの悪魔には届かなかったのか・・・」

      自分が述べた言葉にロビンは両手を強く握りしめた。今、彼女の心情は、ジャドーに対して許せない気持ちだった。

ナミ「ジャドーの裏隠しによる密殺ってわけね・・・なんて残酷!!」

      可憐を慰めているナミも唇を堅く噛みしめた。

   鞠絵「うう・・・」

      周りを見て、ロビンやナミの話を訊いて、鞠絵は眼鏡に貯まるくらい涙で濡れた。そして、メインマスト付近まで移動してきた1体の屍にゆっくりと向かった。(ミカエルも同行)

   鞠絵「ひどいことを・・・罪のないあなた達が飢えて亡くなられるなんて・・・長い間も・・・辛かったでしょう・・・苦しかったでしょう・・・私には感じます・・・あなた達の気持ちが・・・」

      小さく嗚咽しながら屍に抱き付きついている少女、彼女の思いがけない行動に妹達は黙然した。

ウソップ「おまえ・・・こんな臭くて・・・汚そうな屍に抱けるのか・・・こんな化け物みてェなもののために、涙を流してくれるのか・・・」

      ウソップは嗚咽している鞠絵に言った。

 サンジ「なんて優しいんだ・・・鞠絵ちゃん・・・(泣)」

      サンジは感動泣きした。

   咲耶「鞠絵ちゃん・・・」

      うっすらと涙ぐんでいる鞠絵を見て、無意識につぶやいた。

   鞠絵「もし私がもっともっと強ければ・・・あなた達にこんな苦痛な思い・・・させなかったのに・・・」

      小さいころから病弱だった鞠絵は、肉体的に全く強くなれないことに心身に応えながらも、身動きをもしない屍にやさしく差し伸べた。

ミカエル「クゥ~ン・・・クゥ~ン・・・」

      ミカエルも悲しそうな表情をして体をやさしく揺らしながらその屍に接触している・・・

   雛子「あ・・・しかばねさんが・・・」

      鞠絵が悲しく泣き続けると、なんとその屍も、片目から一滴の涙が出てきた。彼女のささやかな気持ちが届いたのか・・・それを見て妹達も目が大きく開いて、涙が滲んできた。

 

      そして・・・

 

  ルフィ「決めた!・・・おれ、あいつら絶対にぶっ飛ばす!!」

      ルフィが!

   ゾロ「ああ!・・・おれもマジでキレたぜ!!」

      ゾロが!

  サンジ「さっさと千枚オロシにしねェとな!!」

      サンジが!

チョッパー「今回おれも戦うよ・・・あいつらのやり方・・・許せない!」

      更には、びびりのチョッパーまでもが、悪辣極まりないジャドー率いるダークプロジェクトを崩壊するための闘志が高まった。鞠絵の悲しむ気持ちで、強者共が次々と怒りに火を着け始めた。

ウソップ「よ・・・よ~し、援護はまかせろ!!・・・おまえら、ド派手に殺ってよし!!」

      ウソップは、相変わらずカラいばりしている。

   ナミ「あんたも戦いなさいよ!!・・・こんな大変な時に、何言っているの!!」

      ナミはウソップにゲンコツをした。

   千影「クッ・・・・・」

      その時、千影は唇を噛み、十字架のネックレスを強く握った。実は彼女も闘志を燃やしているのだ・・・兄を助ける為に、自分のあるがままの技〈魔術〉を使って、ジャドー達に挑みたいと思う気持ちは、ルフィ達と同じであった。ついに罪人となってしまった彼女?・・・もう攻めても攻めなくても同じことだ、どうせなら攻めたほうが・・・・・と思いながらもとても切ない気持ちであった。

  ロビン「あなた達のやる気は認めるけど・・・その前に今はここから脱出することから考えないと・・・」

  ルフィ「おっと、そうだったな!」

ウソップ「だからこんな場所、どうやって脱出しろ言うんだよ~!」

      ウソップは辺りを見回しながら言った。

   千影「急ぐんだ・・・・・でないとジャドーが本当に『王下七武海』に任命されてしまう・・・・・」

      突如、千影がせかせかした口調で言った。

ウソップ「ちょ、ちょっと待てよ!・・・任命って、あと1日もあるじゃないか!!?」

   千影「いや・・・・・この場所は・・・・・空間だけでなく・・・・・時間も歪ましてしまうんだ・・・・・」

ウソップ「おい・・・時間が歪むってのはどう言うことなんだよ?」

千影「宇宙空間もそうだが・・・・・時間はブラックホールで普遍的なものではなく・・・・・人間1人1人の固有時間によって進んでいる・・・・・それは実際上の距離とは全く違うシュバルツシルト半径の形が存在されているため・・・・・実際の時間もそれなりに違ってくるんだ・・・・・」

ウソップ「な、何だ???・・・そのシュバ何とかっていう半径は・・・」

   千影「ブラックホールの回転する軌道運動エネルギーと重力エネルギーとの平衡によって存在している地平面の半径さ・・・・・この空間では・・・・・その質量に伴う強力な重力場の影響を受けているため・・・・・無限遠で普通に静止している人の時間と比較すると進み方が鈍くなる・・・・・つまり・・・・・ブラックホールからもとの世界に戻った時には・・・・・時間が先の世界へ進んでしまうことになるんだ・・・・・」

春歌「この絶え間なく移動している歪みがそうなのですか・・・」

   ナミ「時空の歪みによる相対論的速度の1つね・・・」

千影の論説で、周辺を見渡す春歌とナミが不安げにつぶやいた。

   千影「しかも・・・・・この重力場が無限に続く距離からだと・・・・・時間もかなり遅くなると見た・・・・・」

ウソップ「す・・・するとここでもたもたして居られないってわけか!!」

  ロビン「そう・・・その現象を可能にできるのも、このアナアナの実の能力なの・・・そう言うことでしょう・・・お嬢ちゃん」

   千影「ああ・・・・・」

      ロビンの応えに千影は静かに返事した。

  サンジ「つまりジャドーは、自分が先に七武海に就任するために、わざとこの中に陥れ、おれ達に時間を遅らせる作戦ってわけか!」

 ロビン「それは違うわ、コックさん・・・ジャドーは初めから私達を餓死させるつもりで閉じこめているの・・・私達全員が、彼にとっての抹殺リストに登録されているため、まとめて殺めたほうが手っ取り早いから・・・本来、ブラックホールはいったん内面に入ったら、二度と現世に戻れないと言われている・・・さっきの屍も戻れないままに命を失っていた・・・それが、虚無による異次元空間の恐ろしさ・・・」

      ロビンが正解。

   咲耶「い、いやよ!・・・ここで死ぬなんて!!」

    衛「どうしよう~!(涙)」

   可憐「お兄ちゃん・・・(涙)」

  ルフィ「くそ~!!・・・こんなもの、ぶっ壊してやる!!!・・・“ゴムゴムの鉄砲〈ピストル〉”!!!」

 

      ビヨ~~~~~~ン!

 

      しかし、無限遠に続く空間は、ルフィの伸びる腕では届かなかった・・・

  ルフィ「愚問だ?・・・なぜ壊せねェ!!!」

 サンジ「異次元空間が壊せるわけねェだろう!!・・・常識で考えろ、低能ゴム!!」

      怒ったサンジは、ルフィにかかと落としをした。

 ルフィ「痛ェな、サンジ!!・・・おれの大切な帽子ごと蹴るなよ!!」

 サンジ「だったら考えろ!!」

      ルフィの反抗にサンジは強く言い返した。

   千影「いい方法思いついた・・・・・」

   ナミ「いい方法?」

   千影「これさ・・・・・」

      その時、千影は愛用のバッグからおもむろと水晶玉を出し、そっと主甲板の中央に置いた。

 ルフィ「何だ?・・・さっきの透明な玉じゃねェか?」

ウソップ「何かおまじないでもするのか?」

      彼女が今から何をするのかわからない2人は、思わず見ているだけだった。

   千影「鈴凛ちゃん・・・・・あなたが製作した赤外線懐中電灯を・・・・・少し貸してくれないか・・・・・」

   鈴凛「いいけど・・・どうするの?」

   千影「・・・・・こうするのさ」

      千影は懐中電灯を水晶玉の後方に置いて、照らして見た。ジャケットとロングスカートをシックに着こなし、十字架模様の白いローブを身に付けている彼女は、西洋魔術師ともいえるべき姿だ。

   千影「Happen  the  widespread  lightning  Adam・・・・・」

      千影は唱えた・・・すると、懐中電灯から放射された水晶玉が傲然たる光を発し、そこから赤い光が大きく拡散した・・・

      赤い光に包まれた薄黒い空間が歪み始め、暗闇にカーテンを引く空のように輝く帳を広げていった・・・

 

      なんと突破口が開いたのだ!

 

チョッパー「おお~!!・・・ビームすげェ~!!!」

      赤外線の事を知らないチョッパーは赤い光をビームだと想ったのだろう。

ウソップ「本当に脱出できるみたいだな・・・何かタネあかしでもあるのか?」

      不可思議な現象にウソップは疑問に思った。

千影「ブラックホールが歪むのは・・・・・内部によるドップラー効果が原因の1つでもある・・・・・光はドップラー効果の影響が非常に強いため・・・・・内部に蓄積されているエネルギーを偏らせることができるんだ・・・・・放射された光は・・・・・紫外線やX線などの波長が短く青い方にドップラーが偏移して・・・・・エネルギーを高める効果となっている・・・・・反対にエネルギーを弱らすことができるのは・・・・・その逆効果の波長の長い赤い方・・・・・つまり赤外線を利用すれば・・・・・照射された空間を無効にすることができるんだ・・・・・」

ウソップ「わ・・・訳わかんねェぞ!」

   ナミ「ま、あんたの頭で理解するのは無理ね」

ウソップ「わ、わるかったな!!・・・これでもルフィやゾロよかマシだぞ」

  ナミ「簡単に言えば・・・赤い光がブラックホールの効果を弱らせて、空間を打ち消しているってこと」

ウソップ「そうか・・・」

      ようやく理解した。

   千影「赤外線懐中電灯では光度が低いから・・・・・この水晶玉で光を増幅させて度合を高めたんだ・・・・・」

  ロビン「重力レンズ効果を応用したってわけね」

      流石に学者のロビンは、彼女が説明した原理をすぐに理解した。

ウソップ「世の中には便利な道具もあるもんだな・・・」

チョッパー「なあウソップ・・・今度おれにもあんな武器作ってくれよ!」

ウソップ「だからあれは・・・武器じゃないっちゅうの!!(ツッコミ)」

   ナミ「じゃあみんな気をつけて・・・周りの引力がもの凄く強いから、吹き出す力もそれなりに強力よ!」

 

      ゴーイング・メリー号は、突破口に向かって吸い込むような感じでスピードを増して行く!

 

   全員「わあああああ!!!」

 

      バッシャ~~~~ン!!!

 

      全員が声を張り上げた所でゴーイング・メリー号は脱出した。大きく水飛沫を揚げて、難なく海に着水した。

    衛「よかったよ~、海に脱出出来て・・・」

      衛はホッと一安心した。

ウソップ「脱出したのはいいけど、ここはどこなんだよ」

 サンジ「また目的地から遠ざかったのか・・・」

      周りを見回した2人は、島が何処に在るのかがわからず、迷い始めた。

   鈴凛「たいへん!!・・・時間が1日先、進んでいるよお!!」

      自製の日付付きの腕時計を見て、一大事な事件が起きたかのように、いきなり叫んだ。

  白雪「えええっ!・・・今何時ですか?」

  鈴凛「明朝7時!」

  可憐「千影ちゃんが、説明した通りだわ!」

  千影「ちょうど1日か・・・・・やはり、かなりの早さで進行していたみたいだね・・・・・それだけ高いシュバルツシルト半径の存在で固有空間がねじれていたからでしょう・・・・・」

      千影は時間の歪む原因を推定しながらつぶやいた。

   咲耶「もしかして・・・今日が七武海に就任される日じゃないの!?」

      その時、咲耶は急に気が焦った。

   花穂「ふえ~ん、お兄ちゃまが・・・」

      咲耶の言葉に花穂が嘆いた。

 ロビン「まだ、大丈夫よ!・・・承諾されるのは、午後あとだから・・・」

      ロビンは言葉を聞いて、妹達はホッと一安心した。

 サンジ「最悪で考えて、あと5時間か!・・・」

   ナミ「とにかく、船を進めましょう!・・・誰か、オルゴール貸して・・・」

      せかせかとした口調で、ナミは進行する準備をした。

  白雪「あ、はい・・・」

   ナミ「あら、おかしいわ・・・吸い込む前までは、いっぱいに巻いていたはずだけどね!」

      ナミは不可思議な様子でありながらも、ぜんまいを巻いた。

    衛「四葉ちゃん・・・どう思う?」

   四葉「う~む・・・ブラックホールを歪まさないため、吸い込む際にその引力を利用して勝手に緩んだんじゃないデスかね・・・」

      四葉は頭で思考しながら、推理した。

    衛「引力だけで・・・ぜんまいが緩むの?」

   四葉「何せ、不思議な重力デスからね・・・」

      そして、ルーペでナミが手持ちしているオルゴールを覗いて見ている。

   ナミ「よし、動いた・・・北西の方ね!!」

  サンジ「かしこまりました、ナミさん♪・・・おい!おまえら、船を動かすぞ!! レディー達の住むエメラルド島に帰らないといけねェんだ、もたもたすんな!!」

      ナミに煽てられたサンジは、強い口調で男達〈ルフィ、ゾロ、ウソップ、チョッパー〉に号令した。

チョッパー「おおッ!!」

  ゾロ「フ、調子のいい奴だぜ!」

      メインマストの帆桁から、半分畳みの四角帆をロープでいっぱいに広げて、全速前進に取りかかる。

 ルフィ「よし進め!!」

ミカエル「ワン!!」

 

      緩やかな風を受けてめいっぱい帆走するゴーイング・メリー号・・・異次元空間から脱出した所で、島からまた遠ざかり、焦燥感を漂わしている状況に安心してはいられなかった。一刻も早く奪い返し、住民のみんなを助けなければならない。そのため、妹達にとっては、初めての背負いでもある。

 

   千影「私はどうしたら・・・・・」

      船は目的地へ進行中・・・千影が憮然とした表情でため息をついた。やはりダークプロジェクトの平社員を倒してしまったことに、罪悪感を味わっているのだろうか・・・千影が黙々と海を眺めている。

   咲耶「千影ちゃん・・・この前の件で未だ落ち込んでいるみたいですね。」

    ナミ「大丈夫だって、花穂を助けるために手を出したことだし、それに、倒された相手が秘密組織の連中でも、ジャドーが正式に七武海になったわけでないから、政府もその人の鵜呑みは受けないわよ!・・・ロビンもそう思うよね」

  ロビン「確かに大丈夫だと思うけど・・・先程説明して通り絶対にとは断定できない・・・何せ、ジャドーが政府への私掠手続きも済ませたからね」

      ロビンは、正当防衛についての事柄を咲耶に説明したその事実を通すために、ナミの言葉を全ては肯定出来なかった。

      と、それを聞いた鞠絵が・・・

鞠絵「いいえ、彼はすぐにでも法廷に立つべきです」

ゾロ「ホウテイ?」

      鞠絵の言葉に、ゾロは難しさに眉をひそめた。

鞠絵「彼の無法な行為は決して許されることではありません」

      ジャドーの数々の犯罪について、知的好奇心旺盛の少女は眼鏡のピントを合わせながら冷静に吟味する。

鞠絵「もし彼が『王下七武海』として世界政府に認定されていない場合、わたくしが周知のかぎりでも・・・住民を脅迫して島を強奪したことから、刑法第236条により『強盗行為』、かつ刑法48条第1号により『人質強要行為』、さらに国の許可なしで土地を収用したことから『土地収用法違反』、そして、ロビンさんが先程仰有っていた牢獄での罪なき人々を閉塞したことから、刑法第220条の『監禁』、多くのしかばねさんが発見されたことから刑法第199条の『殺人罪』及び刑法第190条の『死体遺棄』により確実な重罪です」

ウソップ「わ~・・・むずかしい!!」

   鞠絵「その犯罪となるべき証拠も四葉ちゃんがカメラで緻密に撮影してありますし、勿論彼に関与している組織一員もすべて同犯と見なされます。ですから私達がしきりに攻撃を仕掛けても決して罪にはならないでしょう」

   ナミ「じゃあ、さっきネズミ大佐が撮っていた証拠の写真も・・・」

   鞠絵「ええ・・・被害者が、ジャドーの命令によって出撃された一員であれば、勿論受け付けないでしょう」

 ロビン「そのとおりよ!・・・彼女が仰有っていることは正論だわ」

   咲耶「だから心配しないで、千影ちゃん・・・さっきの攻撃は決して罪にはならないわ」

      確かにそうだ。ジャドーの非人間的で残虐な犯罪の数では、普通なら死刑確実である。

   千影「それを聞いて・・・・・安心した・・・・・流石だよ、鞠絵ちゃん・・・・・ありがとう・・・・・」

   鞠絵「いいえ・・・お役に立ててとてもうれしいです」

チョッパー「すると・・・おれ達が奴を倒しても罪にならないってことだよな!!」

   ナミ「こっちには正式な証拠だってあるからね。」

  ルフィ「よ~し!!・・・そうとわかれば、派手にぶっ飛ばすぞ~!!!」

      にっくきジャドーを打倒にルフィは両手を思いっきり挙げて、声を上げた。

   ゾロ「安心するのはまだ早いぜ・・・奴がどんな宿敵かわからねェからな!」

  サンジ「確かに能力も未知数・・・素性が定かではないかぎり下手に攻め込んだら命を落とす危険さえある」

  ロビン「ええ・・・ジャドーが七武海として承諾されたら、前言の説明も無駄になる・・・残り時間で阻止せねばならない上に、幹部や大勢の社員達も殲滅させないといけないから、より過酷な戦いになることも覚悟しといた方がいいわね」

      ロビンは浮き足立つ気持ちで言った。

   千影「ちょっと・・・・・ルフィさん・・・・・」

      デッキからおもむろと来る千影は、ルフィの所に近づいた。

 ルフィ「どうした?・・・千影」

   千影「これから・・・・・ジャドーと戦うのだよね・・・・・」

  ルフィ「おお!! もちろんだ・・・絶対にぶっ飛ばす!!」

      事情は何であれ、ルフィはジャドーを倒すこと一筋だった。

   千影「さっき、アナアナの能力を実感したんだけど・・・・・察するところ・・・・・彼の能力は・・・・・何か弱点を見つけないと倒せないらしい・・・・・」

  ルフィ「何で、そうなるんだ!?」

   千影「ジャドー・・・・・彼は、能力に乗じてブラックホールと一心同体になっている・・・・・そのため、ブラックホールの生起する現象や概念を統計的に導き出さないと弱点が探れない・・・・・そこで・・・・・彼の弱点を探究してみたのですが・・・・・」

      ジャドーの倒すために、アナアナの能力を解析すべく千影は理論的な仮定で、疑問視するルフィに話していく。

  ルフィ「何か、効くものでもあるのか?」

   千影「ちょっと来て・・・・・・」

      そして、彼の手を静かにつかみながら、ゆっくりと船室へ連れて行く。

 

                                                            続く

 


HPへご意見・ご感想はこちらへ

nakamoto402@yahoo.co.jp

TITLE